「ベイ・フォーマーズからの脱却」トランスフォーマー ビースト覚醒 舐め太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
ベイ・フォーマーズからの脱却
シリーズを振り返ると1作目をピークに続編が作られるたび作品としてのクオリティが低下していったように思える。
映画版全シリーズの評価は以下。
バンブルビー>1>2=3>4>5
バンブルビーはハートフルでありながらも熱い、良くできたトランスフォーマー映画だった。ロボットのデザイン含め、これまでの作風とは全く異なり、新たな表現の可能性を感じられた。ロボット達が派手なアクションの為の道具ではなく、生きたキャラクターとして表現されていた点が良かった。
一方、ロストエイジ、最後の騎士王はかなり酷い出来だった。ロストエイジは無駄に長く、過剰なプロダクトプレイスメントが目に余る。ロボット達のデザインも一新されたが、3部作のデザインの方が良かった。ビークルモードの面影がなく、変形も複雑化され、どう変形したらそうなるのか全く分からなかった。
今作はベイ・フォーマーズの弱点を限りなく克服した作品と言える。
(特定のファンにとってはそれが長所なのかもしれないが)
爆発、爆発で胃もたれする程クドい演出。
下ネタ、差別的表現、グロ表現、ブレブレのカメラ等。
また、マイケル・ベイの作風とも言えるかもしれないが、主人公を始めとしてキャラクターたちは落ち着きなく、いつもパニクり、ひたすらに喚く。
マイケル・ベイは人間キャラはともかく、ロボット達を生きたキャラクターとして上手に描く事ができていなかった。
多くのロボットが登場してきたが、性格はどいつもこいつも似たようなもの。喧嘩っ早く、落ち着きがない。
また、オプティマス・プライムはサイコパスで「死ね!くたばれ!」と口汚く罵りながら敵を排除する。
マイケル・ベイにとってオートボットやディセプティコンのキャラクターはどハデなアクションをするためのひとつの要素でしかなく、キャラクターの深掘りはあまりされて来なかった。
一方、今作はオートボット、マキシマル達ををしっかりと生きたキャラクターとして描くことに成功している。
師や仲間を失い辛そうな表情をするオプティマス・プライマル。
オートボットのリーダーとして、仲間を守るため悩むオプティマス・プライム。
バンブルビーでの成功を踏まえているように思う。
しかし、今作は少し多くの要素を盛り込み過ぎたように思える。
1つの映画として語るべき物語が多すぎる事。
まずは、ノアとミラージュのボーイ・ミーツ・エイリアン的な物語。
そして、今回新しく登場したマキシマルの物語。
最後は、オプティマス・プライムの成長物語。
このように描くべきストーリーが多すぎた結果、それぞれの要素が薄味になってしまっている感が否めない。
サブタイトルにもある通り、ビースト達がストーリーの中心に居ると思いきや、どちらかと言うとゲスト的な登場。
もっとマキシマル達の活躍が観たいところだが、今後スピンオフ等でじっくり語られる事を期待したい。
今作の良かったところは、何より戦闘が見やすい。ラストは乱戦になるのだが、それによって見辛くなるような印象は無かった。
あとは、無駄な爆発、エロ、グロ描写がない。ベイ版に慣れ親しんできた人には少々迫力物足りなく感じるかもしれないが、自分としてはこれくらい見やすく、しっかり戦闘を見せてくれているので好印象だ。
人間サイドのキャラクターは少し魅力が不足しているように感じた。ノアとミラージュの関係性、信頼関係を築いてゆく様をもう少しじっくり描いていれば、ラストの展開がより感動的になったと思う。とは言え、不必要に喚いたりしないだけ随分とマシである。
あと良かったのは、オプティマスプライムの人間臭さの部分。仲間を守るために悩む父のような、長男のようなところが見れて新鮮だった。
散々ベイ・フォーマーズを悪く言ってきたが、自分は思春期にトランスフォーマー映画1作目に出会い、衝撃を受けた。おもちゃは買い揃え、DVDは擦り切れるほど観た。