「土地の記憶をめぐる日本的な奇譚」リング・ワンダリング 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)
土地の記憶をめぐる日本的な奇譚
タイトルと題材から、ニホンオオカミの幻影に導かれるように彷徨する話かと思っていたが、東京下町で空襲で亡くなった女性に導かれる話だったとは、ちょっと意外。しかし、土地の近過去の記憶を掘り起こし、現在とのつながりを再認識することがねらいだとわかると、納得。
笠松将、阿部純子ともに和風な顔立ちで、日本的な奇譚と言えるこの作品の雰囲気にぴったり。阿部純子の初登場カットには、ゾクッときた。漫画パートでは、冬山のロケーションが素晴らしく、劇画チックな演出も許せる。安田顕と片岡礼子は、特別出演の感じで、あまりハマってはいなかった。
ニホンオオカミは結局最後まで出てこないのか、と思った中でのラスト。賛否両論あるだろうが、テーマがくっきりと浮かび上がってきて、良かったと思う。この感じは何かに似ているなと考えて、スケールは全然違うが、「惑星ソラリス」を思い出した。
全体として掘り下げは少なく、物足りなさは残るが、こういう作品はこれからももっと観たい。
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