「『遺伝子映画』の綺麗な締め!」ジュラシック・ワールド 新たなる支配者 赤福餅さんの映画レビュー(感想・評価)
『遺伝子映画』の綺麗な締め!
この映画は、80年代~90年代初頭にかけての『映画を観に行くのは大きな楽しみなイベント』という時代の空気を想起させてくれるものでした。
80年代、ハリウッド映画はエンターテイメントの頂点であり、スターウォーズ・インディジョーンズ・ゴーストバスターズ・BTTF等々、社会現象を起こすのが当たり前のコンテンツでした。
家族連れや友人達と観劇しては語らうという事が楽しみなものでした。
そしてその時代の頂点として『ジュラシックパーク』がありました。最新のデータに基づいた恐竜の『本物が存在したらこんな感じなのか』という説得力とパニック映画としての高揚感が存分にありました。
今でもその感動は心の中に鮮明に残っています。特にコップの水の振動が徐々に大きくなっていく所など…
こういう映画を劇場で観るという事は、年齢にかかわらず貴重な体験だと思います。その時の感じ方や時代感はきっと観た人大きな財産になると思います。
昨今の国産アニメ映画大ブームも結構ですが、他の国の文化に触れて同じものを同じように感じられる感性を磨く為にも、こういった映画は不可欠だと思います。
ディズニー映画だけではなく他社のオリジナルでの上映を希望してやみません。
突っ込んで楽しみたい方向けには、ネット配信製作のものでも良いのではないでしょうか?
色々と思う所はありますが、この映画には『ありがとう』と言いたいです。
で、前置きはともかく映画の内容について少々…
今回の映画では『遺伝子操作』について結構突っ込んで話をしていました。
○少女について
彼女の母親は超優秀な科学者でした。研究室に籠もりっきりで、おそらく男性関係も無かったと思われます。そんな彼女が子供欲しさにクローン技術を発展させて妊娠します。ここは重要な点で、いわゆる『細胞分裂』によるクローンではなく、『XY染色体の開発』によるクローンの産み出しに成功していたということです。劇中で「恐竜はメスしかいない」と述べられているように、オスがいないために自然交配による繁殖力は無いということです。しかし女博士は、自分の身をもって研究を結実させました。自然繁殖が可能となれば、いくらでも多くの恐竜を安価で産む事ができ、大きなビジネスになります。女博士は、おそらく「ブルー」という名の比較的人間に慣れたラプトルを実験に使用したと思われます。現にラプトルは「卵を産んだ」ということになっています。少女が子ラプトルと親和性をもっているように描かれているのは、似たような境遇があったからでしょう。また、少女が狙われるのは、『染色体』欲しさからだったのは、言うまでもありません。この映画に後日譚があるとするならば、おそらく少女は家族とともに実験室送りとなることでしょう。また倫理的・宗教的にみて『処女懐胎』となりますし、社会的には『国籍の無い子』となります。まあ、映画なのでハッピーエンドで良かったです。
○イナゴについて
イナゴはおそらく『XY染色体』の実験開発の産物でしょう。女博士が開発データを残さなかった為、研究所が独自に研究を進めていった開発途中の物だと考えられます。『何故イナゴなのか?』それはおそらく「繁殖力がハンパなく強い」からでしょう。恐竜よりも小さく飼育も容易だからです。しかし研究は上手くいっていないようでした。それが判るのは、ラストシーンで研究者が「ウイルスを持った個体を群れのなかに放って死滅させる」ということをおこなっているからです。「同じ遺伝子情報を持つものは、一種のウイルスによって全滅する可能性がある」という推論に基づけば、『XY染色体』はできていないという事です。(この辺は『攻殻機動隊』にも軽くでています)
この二点で、今回の映画の骨子があらわれているのではないでしょうか?
○音楽
期待していたとおり、映画ラストシーンとスタッフロールラストに『ジュラシックパーク~メインテーマ』が少しだけ、かかりました。
「終わったよ」という最後の調べでした。
以上、ネタバレといえるかどうかわかりませんが、見終えた感想です。
ありがとうございました。