劇場公開日 2021年7月2日

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「噺家・笑福亭鶴瓶に肉薄したドキュメンタリー映画」バケモン HALU6700さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0噺家・笑福亭鶴瓶に肉薄したドキュメンタリー映画

2021年11月27日
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鑑賞方法:映画館

笑える

知的

難しい

全国的に新型コロナウイルスの新規陽性者数が落ち着きはじめ、京都府も一桁台まで沈静化してきたこともあり、また大丸京都店にも用事があったので、四条烏丸にあるミニシアターの京都シネマまで、会員更新特典の無料招待券も使うべく、予てから私の父親が観に行きたいと申していた、笑福亭鶴瓶師匠のドキュメンタリー映画『バケモン』が、不定期で未だ上映していると知り、11月17日(水)に父親と一緒に劇場鑑賞に出向いて来ました。

落語家・笑福亭鶴瓶を、17年間に亘って撮り続けたドキュメンタリー映画。
あくまでも<落語家>の笑福亭鶴瓶であって、いつもの<お笑いタレント>の鶴瓶ではない事を念頭に置いて鑑賞に臨まないと、肩透かしを喰らうかも知れないほどに、落語に精進し真摯に取り組む噺家・鶴瓶の姿に肉薄したドキュメンタリーでした。

しかし、もっと正確に言えば、笑福亭鶴瓶という一人の人物を追ったドキュメンタリーではなく、本作の山本真吾監督が追っているのは、実は、笑福亭鶴瓶が演じる落語「らくだ」(=「鶴瓶のらくだ」)なのでした。
落語や歌舞伎の題目にもなっている、この「らくだ」とはどういう噺か、ということから始まって、登場人物たちの居場所、作者の問題、或いは、どう捉えられてきたのか、等々。
この「らくだ」の成り立ちを、東京・神保町の古本屋などで江戸や明治時代当時の地図や文献などの資料を探してきて掘り起こすまで行なうのは良いのですが、あたかも高尚な学術書の様な体裁の内容になってしまい、肝心の「らくだ」の噺自体の解説についてはそこそこに済ませ、あまりにも中途半端だったので、これで「らくだ」の噺の面白さを理解して欲しいと言われても土台無理かと思われました。

ただ、幸いにして、私や私の父親の場合は落語を聴くのも趣味の中の一つでしたので、落語「らくだ」についても(笑福亭鶴瓶師匠のものではないですが)、何度か聴いた事もあり、それなりに楽しめましたし、落語「らくだ」の成り立ちの話自体も興味深く観ることが出来ました。

しかしながら、笑福亭鶴瓶師匠による落語「らくだ」を追ったドキュメンタリー映画としては、その笑い自体が、万人に理解に及ぶ内容にはなっておらず、編集・構成においては、正直なところ失敗したと言わざるを得ない出来映えだったとも言えるでしょう。
その成り立ちを追い過ぎて、あたかも高尚な学術書のような内容で実に面白味に欠けるのでした。

約1.600時間に及ぶ映像から、わずか2時間内にまとめ上げるのには、かなり作業に苦労を要したとは思いますが、肝心の落語「らくだ」の面白さが伝わって来ないのでは意味を成さないとも思いましたし、莫大なフィルムがあるにも拘わらず、ドキュメンタリーとしては切り取り方を間違った編集・構成としか言いようがなく、埋もれた莫大な記録フィルムが何とも勿体ない!

鶴瓶師匠の師匠である六代目笑福亭松鶴師匠の十八番だった「らくだ」だからこそ、50歳になってから落語をやり直されたという逸話をはじめ、<落語家>笑福亭鶴瓶師匠の至極真面目な側面を切り出してドキュメンタリー映画にしても、その陰の努力の姿勢に感心はすれども、笑われてナンボの商売でもあるのに、逆に笑福亭鶴瓶師匠自身も素っ裸にされて正体を明かされたみたいで、気恥ずかしく感じなかったのかとさえも思えました。
NHKの『プロフェッショナルなんとか』や民放の『情熱なんちゃら』などの真面目なドキュメンタリー番組が好きな人達向けの映画だったのかも知れないですね(汗)

確かに、お笑いタレント・鶴瓶として、ラジオ・テレビで計9本のレギュラー番組を抱えつつ、余人には真似できないような「鶴瓶ばなし」を披露するかと思えば、TVドラマ・映画でも個性派俳優としても活躍され、その上で、噺家・笑福亭鶴瓶としてのライフワークとして、50歳からやり直した、落語「らくだ」を日々生ものとして進化させていっているのは凄い事ですし、そんな笑福亭鶴瓶師匠は、まさに正真正銘の『バケモン』とも言えるのかも知れないですね。

従いまして、私的な評価と致しましては、
笑福亭鶴瓶師匠を捉えたドキュメンタリー映画としては、そもそもがピントが外れており、噺家・鶴瓶による「鶴瓶のらくだ」を追ったドキュメンタリー映画となっており、それもがいつの間にやら高尚な学術書の様な体裁の内容に変わってしまっていて、約1.600時間に及ぶ記録映像があったにも拘わらず、正直なところ全く面白味に欠けるドキュメンタリー作品になっていたのが、実に勿体なく思われましたので、五つ星評価的には、★★★(60点)と言いたいところでした。

ただ、この映画は、「本作品は映画館に無償で提供する目的で製作され、入場料はすべて映画館の収益になります。」と作品チラシにも記載されているように、現在、コロナ禍の中で苦戦しているミニシアターなど映画館を救済する目的で上映されている事に沿うべく、映画館でドンドン上映してもらい映画館の収益の一助にして欲しいという願いを込めて、★星を1個分増やし20点加点しまして、★★★★(80点)の評価とさせて頂きます。

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HALU