「きっと大丈夫じゃなくて、ちょっと残念」TANG タング 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
きっと大丈夫じゃなくて、ちょっと残念
原作はイギリスの小説らしいが、内容は実に日本人に馴染み易い。
人間とロボットの絆。もっとよく言うと、ダメ人間とポンコツ・ロボット。真っ先にダメダメ少年と未来から来た青い猫型ロボットが思い浮かぶ。
日本には映画やアニメに様々なロボットが。戦闘ロボット、合体ロボット、ロボット怪獣。それらはおもちゃにも。
現実世界では画期的なロボットも開発。
日本はロボット大国。
そんな日本がまた新たな人間とロボットの絆の物語を紡ぐ…。
監督は三木孝浩。SFファンタジーは初挑戦ジャンル。
先日見た『アキラとあきら』でも初挑戦ジャンルの熱血企業ドラマで上々の手腕を見せてくれたので、本作も“きっと大丈夫”と思ってたのだが…
いや勿論、良作好編。笑えて、可愛らしくて、ハートフルと感動…。
でも、何かちょっと…。
順々に語っていこう。
ある理由から仕事をせず、面接もすっぽかし、ゲーム三昧の毎日を送る健。妻・絵美から愛想を尽かされている。
そんなある日、家の庭に古ぼけたロボットがいるのを発見。“タング”と名乗る。
メーカー元に返そうと出掛けた事をきっかけに、思わぬ冒険へ出発する事に…。
何と言っても、タングの可愛らしさ!
子供のような仕草、覚えたての喋り方…とにかくキュート!
びっくりなのは、このタングの声や演技を主演の二宮和也が担当している事。声色はコンピュータなんかで変え、パフォーマンス・キャプチャーを駆使しているとは言え、子役がやってると思うくらいスゲェ…! いやはや、芸達者。そういや、前にも殺せんせーやってたね。
主人公・健役でも好演。いい年なのに、ダメ大人っぷり。本人は至ってマイペース。どうしようもなく、情けない。そんな彼がタングとの冒険と絆を通して…。その変化や内面を丁寧に。あるシーンの涙の演技はさすが演技巧者。
健の今の自堕落っぷりには、ある過去のトラウマが。元研修医、手術室、そこには患者が…。
タングにも秘密が。オンボロ&ポンコツだが、製造元は大手アンドロイドメーカー。
こう見えて実は、ロボット博士驚きのプログラムが備わっている。記憶も失っており、時折挿入される何か緊迫した過去シーン…。タングは、一体…?
健とタングの過去と成長がドラマ展開のミソ。
ハートフルな絆のドラマも勿論。あの“一杯のコーヒー”、美味しかったな…。
舞台を近未来の日本に置き換え、そのビジュアル。
目を見張るほどではないが、まるで絵本か『ドラえもん』のような世界観。
作風も展開も予定調和だが、ファミリーで見るにはぴったり。
だって、タング可愛いもん。
…と、良かったのはそれら。
ハートフルなファンタジーと可愛いタングを自信を持ってオススメしたかったのだが…、
ちらほら気になる点やおざなりな点が目立つ。
妻の絵美。もっと話に絡んでくるのかと思いきや、そうでもなく。二人の夫婦愛のドラマも描写が弱い。健の背景のお飾りなような印象。言ってしまえば、何でかんで絶対必要なくても…。本作の満島ひかりがメチャ可愛い分、惜しい使われ方…。
他キャストも雑な扱われ方。ナルシスト博士に人気のジャニーズを起用したようだが、出番はあれだけ。かまいたちなんてバラエティーのまんま。小手伸也や武田鉄矢の役もステレオタイプ。唯一奈緒は弾けていたが…、結局彼女も出番はあれだけ。演技やキャラ描写には期待しない方がいいかも。
タングは何故、健の前に現れたか…? 何かここにもポイントがあるのかと思ったら…。まあ、一人と一体が出会わなければ話は始まらないとは言え…。
故障しているタングを直しに中国・深センへ。わざわざ中国に行く設定にする必要、あった…?
タングを狙う二人組。謎の黒服の男。まさかの魔の手。一応これら、本作でのピンチシーンだが、驚くほど何のハラハラもせず。もう致命的と言っていい。『ドラえもん』の方がよっぽどハラハラドキドキがある。
終盤、健は再び“選択”を迫られる。結果は…。が、奇跡が…。ファミリー向けとしてはちょうどいいんだろうけど、あまりにもねぇ…。
それからこんな事言っちゃあ二宮クンには申し訳ないけど、主人公をニート大人にする意味あったのかな…? ありふれているけど、主人公を子供にした方が、よりファミリー・ファンタジーになった気がする。少年とロボットの冒険と友情…。日本人はこの設定に慣れ親しんでいるのだから。
こういう作品にあれこれ指摘し、目くじら立てるもんじゃないのは分かっている。
『ゴーストブック おばけずかん』のようにピュアに楽しめばいい。
それも分かっている。分かっているのだが…
『ゴーストブック』と本作、ファミリー向けファンタジーとして、似てるようで違う。
本作はテクニック(話の展開、見せ方、キャラ描写など)やセンス(ビジュアル、作風など)に凝ったものを感じなかった。一方の『ゴーストブック』はそれなりの巧みさがあった。CGも目を見張るものがあったし。
たかがファミリー向けファンタジーなんだから…と言うなかれ。この点って、結構大きいと思う。
アニメなら『ドラえもん』、映画なら『ジュブナイル』。その他諸々。
タングも彼らと並んで友達になりたいキュート・ロボット。
だけど、この映画とは友達になれなかった。
イイねありがとうございました。ドラえもんとのび太には40年経った今でもお友達になれません。癖のあるダミ声、キャラが「オバQやハットリくんと比べ可愛くない、憎たらしい」のび太の病気レベルの依存性、ドラえもんのご都合主義、ジャイアンの醜悪さ【明らかにイジメの総本山】すみません。おっしゃるとおりですね。ありがとうございました😊😊タングは・・・