「冒険譚のドキドキがない」TANG タング Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
冒険譚のドキドキがない
◉未来がない
心を通い合わせていく人とロボットの関わりがテーマの割には、エモーショナルなシーンがしつこく繰り返される展開にはならなかった。そこは良かったです。ストーリーはアクションや謎解きの冒険譚へ。
でも、住宅街やオフィス街・医療機関の未来感が稀薄で、かつタングを見下すようなAIや研究者も登場しない。むしろタングの潜在的能力がほのめかされたりする。
そのためタングが超最新型のロボットだったことの大逆転のインパクトが弱かった。実は可愛いだけじゃなかった! と思わせてくれないと。
◉ケンはいい奴だが
二宮和也さんは足元の定まらないまま、タングに引っ張られる若い夫…と言うか青年、少年を演じて良かった。優しくて、気持ちはとても温かいのに、人生に億劫。
ただ、これは筋書きの問題ですが、父親の心臓手術で二択を決心できなかったトラウマを、タングのコードの二択で取り戻すのは取って付けた感じが強過ぎました。命を左右する心臓手術で二択できずにタイムリミットを越えてしまうのは、不自然でしょう。
そうじゃなくて、片方を選んだらバツだったことが心の傷になっていたならば、まだタングのコードの賭けが生きてきたかなと思います。
努力は尽くすけど、最後は運否天賦になっても仕方ない。
◉元気の良い美人
マッピング映像が溢れる深圳のファンタジックな夜の街と、裏街の倉庫で悪漢相手に立ち回る奈緒さん。スタイリッシュで、かつ微笑みを絶やさない。私の観た映画の範囲では、編集者、編集者ときて今回は研究者。
この深圳のシーンが、観ていて一番愉しかった。残念ながら冒険ものとして、ここ以外で特に強いワクワクは感じられなかったのです。
夏休みの冒険譚と割り切って、孤島の研究所を抜け出したタングが海路、陸路を繋いで都会に迷い込む一人旅が終盤に差し込まれたら、良かったのかとも思います。