「名前と職業は?一生に一度の体験」オールド とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)
名前と職業は?一生に一度の体験
夏だ!映画だ!シャマランだ!冒頭から問題のビーチに行くまでのパートが比較的定点での撮影や流れるようなスムーズな移動を伴う静かなショットの連続だったのに対し、いざ"それ"が始まってからはまさしく目眩のしそうな怒涛のカメラワークを堪能できる。酔いそうなほど動き回ったり文字通りグルっと回ったり、またその回っているときに変化を描くことで観客にも作中での時間経過を感じさせるなど、不和・時間の歪みを演出する見せ方の上手さが光る。薄気味悪さ(ex.テントから出てくるアレックス・ウルフ)や残酷さなど随所でしっかりと作品を形作るクセがある。終盤のネタバラシパートになるとやはり芳ばしさもあった(ex.『ザ・ハント』)。ヒッチコックがサスペンスの神様ならば今日における"スリラーの神様"?ヒッチコックといったらドリーズーム通称めまいショットも見られる。
光陰矢の如し。今回もオリジナリティがすごくシャマランはシャマランでしかなかった、こんな監督そうそういるものじゃない。昨今のヒーロー映画ブームに一石投じるようなアンブレイカブル(ガラス?)・ユニバースを『Glass ミスター・ガラス』で閉じたシャマラン、コロナ禍で製作された新作!彼が今回挑んだのは子供たちに渡されたらしいグラフィックノベル Sandcastle に着想を得て、私達が日頃生きてく中でふとした時に感じる"時の速さ"。子供の成長は一瞬だとか(週末も?)、それはかけがえのないものほどそうで、だから残酷に引きずるし、興味の尽きないアイデアの宝庫にも身近さを感じ取れる。ガエル・ガルシア・ベルナルを座長とした多国籍キャスト。とりわけ息子役はシャマランが自身を投影しているのかなんて勘繰ってしまった。本編前にはシャマラン自身による、コロナ禍における劇場体験の素晴らしさを説くアツいメッセージもあった。ちなみに、もちろん本作でもシャマラン自身が出演しているので、シャマランシャマラン尽くし。
今をもっと大切に生きようと思いました、と小学生の感想文みたいな締めで。