劇場公開日 2021年8月6日

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「正義に固執する老夫婦VS辛酸を舐めてきた凶悪一家」すべてが変わった日 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5正義に固執する老夫婦VS辛酸を舐めてきた凶悪一家

2021年8月27日
PCから投稿

1960年代を舞台にしているが、映画のテイストは完全に激渋な西部劇。息子を亡くした老夫婦が、未亡人になった息子の妻が再婚相手と一緒に引っ越したと知り、孫のことが心配になって取り戻しに行く。ところが再婚相手の実家がかなり凶悪で、両者は凄惨なバトルになだれ込んでいく。

と、プロットはバイオレンス西部劇なのだが、この再婚相手の一家が、開拓民の辛い歴史と田舎のきな臭さを凝縮したような深い闇を抱えていて、トキシックな家父長制で結束をキープしている。しかも家長として暴力の連鎖を生んでいるのが、辛酸を嘗めながら生きてきた女性であるという歪み構造に着眼したのは、映画の功績なのか原作小説の功績なのか。

ただ、英国俳優のレスリー・マンヴィル演じるこのビッグバッドママ的存在は強烈なのだが、そちらを深堀りするより、自分たちの正義を貫こうとする主人公の老夫婦の方に比重が置かれているのは、少々勿体ないようにも感じた。とはいえこれだけ硬派でいぶし銀の映画がちゃんと今も作られて、日本の映画館にまで届いているのは、映画ファンとしてはとてもありがたいことでした。

村山章