「破天荒ガールの通過儀礼の物語」ビルド・ア・ガール 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
破天荒ガールの通過儀礼の物語
「ブックスマート」でフェルドスタインの魅力に開眼した人にとって本作は、彼女が内へ外へと繰り出すパワフルかつダイナミックな表現性を享受できるまたとない機会となろう。冴えない高校生が一転して90年代の辛口音楽ライターというカルチャーの最前線に踊る出るシンデレラストーリーも型通りとはいえ安心して楽しめる。若さの特権とは試行錯誤してちょっと調子に乗って、それから壁にぶつかって、もう世界の終わりだ、絶望だと感じてもそこからまた這い上がることができること。自分一人の力で生きていると思いきや、そこに様々な大切なものが介在していることに気づくことで、ひとまわり成長することができる。その点、ライターや音楽業界うんぬんというより、むしろ「17歳の肖像」などに通じる少女の通過儀礼の物語と言えるのかも。もっと書くことや伝えること、はたまた音楽に対する根源的な情熱をじっくり浮かび上がらせて欲しかったとも思うのだが。
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