「英雄だから見返りを求めないのか、見返りを求めないから英雄なのか?」英雄の証明 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
英雄だから見返りを求めないのか、見返りを求めないから英雄なのか?
警察の不在や司法制度の違いなどには疑問や違和感を感じざるを得ないが、そこは、イランとはそういう国なのだろうと思うしかない。ただ、そんな特殊な社会の物語であっても、登場人物たちに同情したり、共感したりできるのは、普遍的な人間の姿がきちんと描かれているからだろう。
そして、その最たるものは、「人間の弱さ」なのではないか。
単なる偶然や成り行きで手に入れた名声なのだから、それ以上のものを望まなくてもよいはずなのに、借金を返せたり、刑務所から出られたり、職にありつけたりするのではないかと、ついつい欲を出してしまう。真実を取り繕おうとして悪意のない嘘をつき、さらに嘘を塗り重ねて、結局、信頼や信用を失ってしまう。それらは、すべて、どこの国の、誰でも持ち合わせている人間の弱さゆえの行いであろう。
さんざん愚かな行為を繰り返したあげく、刑務所に戻っていった主人公だが、寄付金を他人に譲り、吃音の息子が晒し者になるのを防いだことによって、真の英雄になれたのではないだろうか?ほろ苦くも、かすかな救いが感じられるラストだった。
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