「死を選ぶ権利があるとすれば」すべてうまくいきますように moroさんの映画レビュー(感想・評価)
死を選ぶ権利があるとすれば
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原題の英語訳は Everything Went Fine 、過去形なんですね。
脚本家の自伝的小説に基づいたストーリー。
盛り立てるような演出やエピソードはなく、淡々と日常が描写されています。
もしも親が安楽死を望んだら私はどうするだろうと、自身を投影せずにはいられません。
本作のテーマは、延命治療をせずに病状にまかせて死を迎える安楽死でなく、服毒による積極的安楽死です。
主人公エマニュエルの父アンドレは、半身麻痺でひとりでは何もできなくなってしまいます。
できないことばかりで絶望しても、首を吊ることも自宅の拳銃で自殺することもできません。
死を選ぶ権利があるとすれば、アンドレからは失われてしまったようなものです。
娘のエマニュエルは父の安楽死に協力しますが、父に心変わりしてほしいとも思っています。
だから、決行の延期を喜ぶし、ディナーには赤い服を着ます。
その姿が健気でなんとも涙を誘います。
周囲の人々はそれぞれの立場や価値観から自分本位に言葉をかけ、エマニュエルは苦悩を深めます。
親族たちから批判されれば葛藤し、母から「bon voyage」と言葉をかけられれば困惑します。
決行日が近づくにつれて父が生き生きとする様子に、看護スタッフからは「生きる希望が湧いてきたよう」と励まされますが、皮肉にも聞こえます。
エマニュエルの苦悩は想像もつきませんが、ひとりで抱えるには大きすぎることは間違いないでしょう。
エマニュエルに悲しみを分かち合う妹がいて、寝食をともにするパートナーがいて、精神科にかかる冷静さがあってよかったです。
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