「あらゆる世代を網羅した物語構造」3つの鍵 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
あらゆる世代を網羅した物語構造
あらゆる物語の構造はどこか建築物とよく似ているものだが、複数の家族が登場するこの映画は、さながら彼らの暮らす住居そのままに”集合住宅”然とした作品と言えそうだ。はじまりは夜間に起こったひとつの衝突事故。でもそこからお互いの家族が密に絡まり合うというよりは、むしろ3つの家族のオムニバスのように話は展開していく。その登場人物を紐解くと、生まれたばかりの赤ん坊から高齢の夫婦に至るまであらゆる年代が満遍なく散りばめられていることがわかる。その上、物語もクロニクル的に進んでいき、子供から青年へ、若者から中年へ、中年から高齢者へと各々が一つ階段を登っていく姿に、なんとも言えない時の儚さを感じたり、はたまた彼らの成長が愛おしく思えたり。中盤のスキャンダルをいかに受け止めるかで評価は大きく変わりそうだが、個々の集積によって「人生」を浮かび上がらせる構造には見応えを感じるし、ラストの余韻も上質な香りがする。
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