劇場公開日 2022年9月16日

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「ナンニ・モレッティ監督による群像劇」3つの鍵 たいちぃさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ナンニ・モレッティ監督による群像劇

2022年8月29日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

オンライン試写会にて鑑賞。

冒頭、暴走する自動車が蛇行運転をして女性を凄いスピードで轢いた挙句、家に突っ込むという驚きの事件から始まる。なんと衝撃的なオープニング!
そして、自動車が突っ込んだ家がアパートであり、そこに住む3組の家族の愛情・苦痛・断絶などを描きながら、それぞれの「家族」の閉塞感だけでなく、「家族どうしが繋がるか?」と思えば「コミュニティの機能不全」も描いた見事な映画であった。

ただ、そうした3つのドラマを描きながらも、息子のことを思い続ける母親の愛情あふれる姿、「幼かった娘に悪いことは起こらなかったのか?」と心配し続ける父親、出稼ぎ夫が不在の中で産んだ娘を育てようとする精神不安定な母親など、いろんな人物が描かれる群像劇となっており、「よく、これだけの出演者を丁寧に描きながら、5年、10年に亘る大河ドラマ的な映画を構築したものだ…」と思わされる。

そして、誰もが「必死」に生きているからこそ、その必死さを追い詰めた結果「極端な行動」を取る人もいて、起伏に富んだドラマであった。

エピソードが盛りだくさんなので、それらを記すのは困難だが、自ら出演もしているナンニ・モレッティ監督、この映画を観終わった時には「希望」を与えてくれるような気持ちだったというのが伝わって来た。

ただ、登場人物がやたらと多く、時間の飛躍もあったりして、全体的に散漫な印象を受ける映画に見えてしまったのは惜しい気がした。
群像劇なので已む無しなのかも知れないが、何らかの感動させてくれるところも欲しかったと思う。

<映倫No.49225>

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たいちぃ