「類まれな映画に遭遇」TITANE チタン ミカエルさんの映画レビュー(感想・評価)
類まれな映画に遭遇
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カンヌ映画祭でパルムドールを受賞したからという理由で鑑賞したが、この内容が女性監督の作品であることに驚愕し、こういう作品に最高賞を与えるカンヌの懐の深さに敬服した。車と性的に交わるというシーン、全編にわたって頻出する痛みを感じるシーン、異常な衝動にかられた凄惨な殺人シーン、これらは脚本も担当したという女性監督の女性ならではの演出といえるのか。過去にデビット・リンチ監督の『ワイルド・アット・ハート』が受賞した時も感じたことだが、カンヌの寛容さには度々恐れ入る。
主人公の女優はインスタグラムからスカウトされた新人で、この作品がデビュー作だという。この女優の存在感が凄い。幼少期に交通事故に遭い、頭蓋骨にチタンプレートを埋め込まれる数奇な運命、それ以来、車に対して異常な執着心を抱くようになる、男たちを挑発するエロティックなダンサーとして登場したかと思えば、連続殺人事件を起こし、容姿を変えるため、髪を切り、さらしを巻いて、自分の鼻を壊して逃走する、行方不明者の息子になりすまして他人の家に潜伏して、最後は、背骨がチタンでできている子供を出産し、絶命する。主人公の壮絶な人生を全裸も厭わず見事に演じている。
カンヌ映画祭審査員長のスパイク・リーが「こんな映画、観たことない」と評したという。確かに、類似している映画はほかに見当たらない。私自身も、観たのはもう1年前だが、今でもインパクトのあるシーンの数々は残像のように目に焼き付いている。忘れられない1本である。
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