劇場公開日 2022年4月1日

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「純粋なる情動と執着がたどり着くハッピーエンドに泣いた。」TITANE チタン スカポンタン・バイクさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0純粋なる情動と執着がたどり着くハッピーエンドに泣いた。

2022年4月29日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

帰郷道中第2弾(第1弾「アネット」)

この作品を観たのは、確かライブイベントが終わって夜間バスで帰ってきた時に偶々公開中だったのを知ったってのがきっかけでした。
存在自体は、私が敬愛してやまないポール・トーマス・アンダーソン監督とエドガー・ライト監督が絶賛していたので知っていた、にもかかわらず公開日とか上映劇場を何も調べてなかったという杜撰さ。本当に観れて良かったと心から思います。

この作品に関しては何の事前情報もなく、「R指定か、へぇー」程度な感じで臨みました。
いやぁ、もうね。始まってすぐに震え上がりましたね。とにかくバイオレンス描写が生々しく気持ちが悪い。どれ一つとっても痛々しい。しかし、同時に痛快でもある。何故かというと、画面内で行われる主人公アレクシアの暴力はどれも自身の本能とリビドーが根底にあるからだと思う。全ての行為は彼女の自己責任のもと行われ、自身の欲求を満たすためのものになっている。しかし、それ故に彼女はどこにも留まることができない。彼女の常に変化し不安定な情動についていける人間がいないのだ。

その流浪の旅の末に現れるのが消防署の署長ヴァンサン。彼は行方不明の息子に執着している。さらには老化を誤魔化すためのステロイド注射をしている。つまり、彼は過去に今日まで囚われ変化を拒み続けている人間なのだ。

これが驚くべきことなのだが、この映画の真の主人公は実はこのヴァンサンなのだ。上映時間に出続けてるという意味ではアレクシアは主人公と言えるのだが、彼女は人物というよりも、ヴァンサン含め周りに影響を及ぼす現象に近いと思う。
ネタバレ回避として、具体的には記述しないが、アレクシアと対峙することで、ヴァンサンは「今」を生きる力をアレクシアから受け取ったのだ。そしてそれは同時に、アレクシアがようやく受け入れられた瞬間でもあるのだ。
絵としては、全然そうは思えないかもしれないが、これは紛れもなくハッピーエンドなのだ。非常に痛々しい旅路の果てに迎えたこの幕引きに、涙が溢れました。

本当に映画館で観れて良かったと思います。
暴力描写に関しては好みが分かれる所なので、誰にでもオススメという事はないのですが、今年のベストに入ってくるぐらい、私にとっては大傑作でした。

では、また。

スカポンタン・バイク
talismanさんのコメント
2022年5月2日

完全に共感しました。

talisman