劇場公開日 2022年4月1日

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「過激に人間の根源的テーマに迫る怪作」TITANE チタン 悶さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0過激に人間の根源的テーマに迫る怪作

2022年4月26日
PCから投稿

【鑑賞のきっかけ】
カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞したことも理由のひとつですが、予告編を観て、その妖しげな魅力に引き込まれてしまったのが、大きな鑑賞のきっかけとなりました。

【率直な感想】
重く、暗いトーンが全体に行き渡り、かなり過激なシーンも頻発し、さすが、R15+だけのことはあるな、という感じでした。
しかしながら、この作品は、人間の根源的なテーマが巧みに取り入れられていると感じ、いろいろと深読みが出来る作品ではないかという気もしています。

<機械とのシンクロ>
本作品の主人公の女性、アレクシアは、子どもの頃、交通事故に遭い、治療のため、頭蓋骨にチタンプレートを埋め込まれていた、という設定。
ここで、私は、1980年代に、SF小説で流行した「サイバーパンク」というサブ・ジャンルを思い出しました。
そこで描かれる未来社会では、人々は、脳内に、様々な機械を埋め込んでいた。
それは、主にパソコンのマイクロチップのようなもので、そうした機械と同期(シンクロ)することで、すぐにネット空間に入り込むことが出来るというものでした。
本作品でアレクシアは、機械(チタンプレート)を頭に埋め込まれている。
そして、同期(シンクロ)するのは、<車>という機械。
しかも、それは、「究極の」同期(シンクロ)だった…。

<描かれるテーマ>
公式ページで、あらすじを読むと、「自らの犯した罪により行き場を失った彼女はある日、消防士のヴァンサンと出会う。」とあります。
ところが、実際に鑑賞してみると、ヴァンサンと出会うまでが結構長くて、物語の半分とまではいかなくても、3分の1くらいの時間がかかっていたように思います。
私は、この物語は、「ヴァンサンとの出会い」を分岐点として、2つに構成されているように感じました。
出会いの前では何が描かれているか。
それをあらすじとして表現するとネタバレになるので、端的な言葉で表現すると、「性」と「暴力」と「死」だと思います。
それが、出会いをきっかけに、テーマが変容していく。
そこで描かれるようになるのは、「愛」と「生」です。
いずれも、人間にとって、重要なテーマであり、それを、かなりインパクトの強いシーンで描写していく本作品に、私は最後まで圧倒されたままでした。

そして、最初から最後まで根底に流れているのは、先述の<機械とのシンクロ>。
思えば、地球上の生物で、機械を作り、機械と共に暮らしているのは人間だけ。
時間があればスマホを見ている人は、スマホとシンクロしているようなもの。
<機械とのシンクロ>は、現代人にとって、重要なテーマになっているのかもしれません。

【全体評価】
本作品で、脚本とともに監督を務めたジュリア・デュクルノーは1983年11月生れで、2022年4月現在、38歳。
今後とも活躍が期待される監督さんです。
その期待も含め、本作品を高く評価します。

悶