「耳を貫くような金属音が全身を駆け巡る」TITANE チタン 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
耳を貫くような金属音が全身を駆け巡る
幼い頃、交通事故で頭にチタンを埋め込んだ少女アレクシア。
それ以来彼女は車に取り憑かれ、遂に車とセックスをする。
そして、とある罪を犯した彼女は行き場を失い、ひょんなことから消防士のヴィンセントの元へ身を寄せる。
彼は彼女を10年前に行方不明になった自身の息子と信じて共に暮らした。
ただし、彼女の体のある変化は止まることなく…
まず、
勝手に悪趣味なド変態胸糞映画だと思っててごめんなさい。
キモくて好きとか言おうと思ってた…
めちゃくちゃ真面目で純粋な愛の物語だった。
前半は不穏さが見え隠れする。
車のエンジン音を口ずさんで父親へちょっかいを出したり、激しい炎の描かれた車の上でショーガールとして大股広げて踊ったり、突然殺意剥き出しで耳にかんざしブスブス刺したり。
てっきりアレクシアが悪に堕ちていくのかと思いきや、後半ではヴィンセントの“息子”としてどんどん更生していくのだから驚き。
「車、性、狂気」そういった言葉から鑑賞前に想像していたのとは全く違う落とし方。
マタイ受難曲の流れるクライマックスには、受胎の苦しみと生命の神秘を感じた。
「俺がついてる」
鼻を変形させるために洗面台に顔を打ち付けるシーンは流石に観ているだけで痛い。他にも痛々しいシーンは多め。
そしてやはり、車とのセックスと車(?)を出産するシーンは衝撃的で頭から離れない。
これが本当のカーセックスだ⁉︎
「愛」に対する一つのアンサー。
キリスト教を絡めて、2020年代の新たな愛の価値観が生まれた。
こういう作品に平気でパルムドールあげちゃうカンヌって一体…
まだパルムドール作品6本しか観てない🔰だけど今のところ全部ハマってるかんね。本当に信頼できる。
来年はどんな傑作が選ばれるんだろうか。
※補足
パンフレットのデザインがこれまた斬新でカッコ良過ぎて大興奮。
迷わず購入させて戴きました。