「力強い愛に包まれる」TITANE チタン shironさんの映画レビュー(感想・評価)
力強い愛に包まれる
噂どおりの問題作。
カンヌでは途中退室者続出と耳にしましたが、実際キツかった〜。
痛いの苦手なんで。薄目で鑑賞。
でも、実際には映っていなくても痛さを感じるって凄いですよね。映像力!
痛いのが苦手な方は注意した方が良いですが、それを乗り越えてでも見る価値はあると思います。
『オールドボーイ』『嘆きのピエタ』『オンリーゴッド』あたりが大丈夫なら問題ないレベルかと。
しかし、これをパルムドールに選ぶとは、さすがはカンヌ。
ぶっ飛んだ映画ですが、ラストは今まで感じたことの無い、ものすごい愛情に包まれます。
あらすじでは「アレクシアの体には重大な秘密があった」までしか書かれていないので、この先はネタバレか。
要点をぼかして書きますが、気になる方は読み飛ばしてください。
ツッコミどころ満載のぶっ飛んだ展開についていけるかどうかで賛否が分かれるかと思いますが、私はメタファーとして受け止められました。
「車」はどう考えても女性ではなく男性の象徴でしょうが、この映画では父親として描かれていたと思います。
父親との確執に始まり、父親を求め、父親の愛で終わる。
それに、これまで女性が母性と言う名の幻に言いくるめられてきた感覚には、ものすごく共感できます。
一応、経験者なので。自分の体への違和感や自分でハンドリングできない恐怖に気づかないように麻痺させて、やり過ごすしかない。
グロテスクな肢体から目を逸らすのに重宝するのが“母性愛”
“チタン”は私たちに後から埋め込まれた“固定概念”そのもので、逆説的に説いていると感じました。
女性が乗り越える過酷な変化に対して綺麗事で蓋をせず、「気持ち悪い」や「怖い」と感じてしまう事を責めないで欲しい。
それに母性を賛美しておきながら、そのくせ職場(社会)では身体に異変が無いフリを暗黙のうちに強要される。体調が悪くなろうものならポジションから外されかねない。(と本人がプレッシャーを感じることも)
その辺の現代女性が抱える問題にも切り込んでいると感じました。
そして、それと同時に、滑稽に感じていたフォルムが美しく愛おしく見える瞬間があることも描かれています。自分の体を受け入れる瞬間が見事です。
じゃあ、男に父性は無いのか??
もちろんその問題にも言及しています。
時として他者を排除してでも失いたくない存在がある。
私たちは、良くも悪くも愛に依存出来る。
そして私たちは、男であっても女であっても、
この未知なる得体の知れないものを無条件に愛で包み込むことが出来る。
そんな力強いラストに震えました。
まったく期待せず、たまたま空いている時間に上映されてたので見に行った映画でしたが、強烈!でした。
後で賞を取った作品と知りましたが、よく賞をあげたな、と。
自分のレビューには書いたのですが、この作品、かなり好きです。