「パルムドールに通底するメッセージはあれど、狂気!」TITANE チタン わたろーさんの映画レビュー(感想・評価)
パルムドールに通底するメッセージはあれど、狂気!
Filmarksのオンライン試写で拝見。
自分はどちらかというと、リアル9:フィクション1で、リアルがフィクションを超えていく瞬間に映画的快楽を覚えるタイプ(桐島、部活やめるってよ、愛がなんだ、ファントム・スレッド、Swallowなど)。これは言うなら真逆といえば真逆で、フィクション味が強い、どこかSFのようなスリラーなので本来なら好まない。評価も難しいタイプの映画である。主人公に感情移入しにくい設定であり、思い切って説明セリフを排しているから。
じゃあこの映画がつまらなかったかと言えば、これもその真逆で、とてつもない映画体験をさせてもらったし、映画館で見ると震え上がるようなグロシーンもあるので、オンライン試写で見させてもらって本当に良かったと思ってる。
タイトルの作り方だよね。TITANEの文字の中に何があるか。この時点で作り手の確かな技術が伺える。
オープニングの交通事故までのシーンからのダンスシーンの毛色の美しさ。証明やカメラの撮り方まで本当に素晴らしい。
類似作としては、遊園地の遊具に本気で恋をする「恋する遊園地」に近いだろうか。これもフランス映画。でももっと容赦ない。車との性描写はもはや暴力と言ってもいい快楽の求め方だったし、己の幸せしか見えてないような作り。愛されて育ってこなかったことへのメタファーなのか?
エンディングにかけて疾走感を失わないのは、主人公と息子を探す父親の確かな演技力。先程も書いたように説明セリフを排しているからこそ、演者の目線一つ、唸り声一つ、ため息一つでわからせてくれる。
これがパルムドールですか…攻めてますね…とも思ったけど、どこか万引き家族やパラサイトにも通底してるものも感じた。愛とは、家族とは、成長とは何か、狂気も感じつつ確かな技術によって作られた傑作です。