劇場公開日 2022年4月22日

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「わがままで曖昧な我々の存在を思う傑作」パリ13区 エロくそチキンさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5わがままで曖昧な我々の存在を思う傑作

2022年4月23日
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鑑賞方法:映画館

戦火のスリランカ🇱🇰から逃れてフランス🇫🇷に渡った疑似家族をシリアスに描いた2015年の傑作「ディーパンの闘い」でカンヌを制したジャック・オーディアール。

前作「ゴールデン・リバー」は何とゴールドラッシュ時代のザ・アメリカン🇺🇸な西部劇。アウェイだったろうに、ジョン・C・ライリーの代表作となる素晴らしい作品だった。

そして現代のパリ🇫🇷を舞台にした今作は、若者の孤独、不安、恋、セックス、心の振れなどを捉えた普遍的な傑作。何より愛おしい作品だった。

イエローの女子。
台湾系のエリートな家族の次女。
認知症で施設に入った祖母のマンションをルームシェア。

アフリカ系ブラックの男性。
2Wのセックス。
二人の女性と比べ健康が際立つが、それさえ絶対的なものではない。

ボルドーから来たホワイトの女性。
義理の叔父との10年間の関係。
三十過ぎて復学した大学での誹謗中傷。

3人の人生の交錯。
緊張した。

105分の中で考えられる最高のハッピーエンド。
しかしそれとて束の間。
わがままで曖昧な我々の存在をも考えることになる秀逸な構造。

今年のベストの一本だろう。

エロくそチキン