劇場公開日 2022年7月1日

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「人それぞれに「自分って最悪!」がある」わたしは最悪。 crisさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0人それぞれに「自分って最悪!」がある

2024年8月11日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

好きだったな。
前半はポンポン、テンポよく進んでいく。
プロローグ的な。まだ本章は始まってない、説明部分的なところはポンポン進んでいくので、本章に入って行く頃にはストーリーに引き込まれてる。

最初のテンポとはうって変わって、
ストーリーが後半になっていくに連れて、ゆっくりと、ひとつひとつのシーンに集中させてくれる感じ。見入ってしまう。
俳優たちひとりひとりの演技、役作りも魅力的だった。

主人公ユリヤ、コミック作家アクセル、カフェ店員アイヴィン。
この3人をメインキャストとしていいんだろうけど、
この3人、なんかじっと見てしまう魅力があった。
もしかしたら、そういうカメラワークや演出がそうさせてるのかもしれないけど、後半は彼らの演技がとても自然であり、魅力的であり、感情、表情に引き込まれていった。

ノルウェーの作品を見るのは初めてだったかもしれない。
ノルウェー(オスロ?)の街並みが味わえて楽しかったのも、冒頭この作品に引き込まれていった要因の1つだと思う。

北欧、という感じがところどころ感じたというか。笑
具体的にどこが、って説明するのはムズイのだけれど、
街並み、インテリア、人の佇まい(もちろん日本とは違うし、アメリカの感じとも全然違う。ヨーロッパといってもやはり北欧は北欧で独特の雰囲気がある。自立感?の空気?)そういうものから違いを感じた。
私は日本の作品では何故か「湿度」を感じる。映像に。
なぜかわからない。日差し、光量が関係しているのかもしれないけど
作品を見た時に、その光量で湿度とか気候の感じが伝わってくる。

今作の、他の家族たちとコテージで宿泊するときのあの気候の感じ。気持ちよかったな。
そして街並みの時も、空気・気候の感じを味わいたくなって、観ながらもすごく気候・空気感を想像していた。
「気持ちよさそうな気候だな〜」なんて思いながら終始見ていた。

インテリアもよかったな〜
それこそ北欧って感じがしたな〜色味。白とかクリームとかスッキリシンプル系な感じがした。全体的に。
アクセルと住んでた部屋が好きだったな。

アクセル、私は結構好きなタイプだった。
だから結構こころ掴まれる、ぎゅ、っとなるシーン多かった。
ユリヤに別れを告げられて、引き留めるシーンがとても好きだった。
アクセルのスキンシップの取り方、距離の詰め方がタイプだったな〜〜
アイヴィンも優しくていい男だったよな〜
(アダム・ドライバーに見えて仕方ない)

良いか悪いかは置いておいて、ユリヤのああいう決断の仕方、わかるところがあった。
「行き詰まると別れる」私もその節があるから耳が痛い。
何かに行き詰まると、今、できることをしようとしてしまう。
衝動に近い。
それは持ってるものを手放すことかもしれないし、人間関係を見直すことかもしれないし、引っ越すことかもしれないし、転職することかもしれない。
その行動はきっとはたから見ると「迷い」のようにも見えるだろうし「何してんの」って愚かな行動に見えてしまうかもしれない。
でも、本人にとっては、何か、何かはっきりとわからない原因に対して、
何か、何かアクションを起こして、何か、変わっていかないか。
そんな心と体の衝動。
迷ってるのは自分が一番わかってて。でもじっともしていられない。
だから、そんな行動をとってしまうのだ。
その行動は後から振り返った時、後悔してしまうことかもしれない。
でも「良い」とか「悪い」とかではなくて、
その時、その瞬間には、その行動が必要だったのだと思う。

人からはきっと「最悪だ」と言われるのだろう。
ここいう行動は他人に迷惑をかける。
それは本人が一番わかってる。申し訳ない。
「私は最悪な人間だ」とその都度落ち込む。
申し訳なくて、自分も情けなくて。
でも、
私はこう生きるしかないんだよな。と、開き直ってるわけではなくて
いや、開き直ってんのかもな。笑
落ち込んで、落ち込んで、開き直って、また進む。

「私は最悪」
英題: The Worst Person in the World
きっと誰しも「あー自分って最悪な人間だ!」って思うこと、必ずあると思う。今作はユリヤの、「私って最悪だ!」を見せてもらった気がする。
誰かにとっては最悪だし、でも誰かが見ると「わかるよ」と共感し癒えるものがあるのかもしれない。

ユリヤは、何かに行き詰まった時、街を歩いていた。
遠くを見つめて、太陽・朝陽を見つめて涙する。
悩んだ時は歩いて歩いて、太陽を見る頃に、何か自分の中で結論が出るような。ユリヤのそのシーンを見るたびに、ああ、こういうの、あるよなあって。自分も悩んだ時は歩いて、綺麗な朝陽を見たいなって、そう思った。

p.s.
不意打ちのOlav

cris