「リアリティとロマンティシズムとファンタジックの見事な融合」わたしは最悪。 12shiho28さんの映画レビュー(感想・評価)
リアリティとロマンティシズムとファンタジックの見事な融合
優秀であるが故に自身の活かし方を見つけあぐね、理想とは遠い現状に焦りを感じつつも甘んじているアラサーのユリヤの、最後の自分探しの顛末。
物語の中で一貫しているのは、ユリヤが自分の気持ちを最優先に決断をしていること。
歳の差に躊躇する男に積極的にアピールして交際を始めたり、仕事で成功している彼に劣等感を感じたら酔った勢いで気のあった優しいだけが取り柄の男に乗り換えたり。
30歳になってもまだ自分探しの真っ只中。どうにか自分が自分の人生の主人公になりたいと足掻く彼女に、運命はあまりに手厳しい現実を突きつけ、結果それが彼女に待ち望んだ転機を与える。
物語は序章と12の章、終章の14の章で構成され、それぞれが彼女の人生の小さな転機であったり終わりだったり始まりだったりして、それぞれのユリヤの葛藤や希望や後悔を演じ分けるレナーテ・レインスベの躍動感とリアリティが素晴らしい。
監督の前作「テルマ」では終始不穏な空気が漂っていたけど、今作ではコメディの軽いテイストでありながらどこか不安定な危うさが感じられた。そして変わらぬ映像美はさすがトリアー監督。今回はロマンチック且つファンタジックな演出も。
ラストシーン、人生の勉強代と言ってしまうにはちょっと手厳しい経験を経て、ユリヤが選び決断した現在に、小さくエールを送りたくなった。
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