「期待値は勝手に上げないのが吉」わたしは最悪。 JYARIさんの映画レビュー(感想・評価)
期待値は勝手に上げないのが吉
その名の通り、最悪な映画だった。
と言うのも、本作について知っていた事といえば
デンマーク出身の監督の、アカデミーノミネート作品
という事くらい。
それで、題名『わたしは最悪。』と来た。
しかも、評判は高い。
ほうほう、きっとタイトル通り
「わたしは最悪(な状況に意図せず置かれてしまったけれど、それでも何とか生きていく)」
的な話かなーと勝手に想像して盛り上がってたんですよ。
なんとなく「フランシス・ハ」的なね。
その次にポスターを見て、それもよかった。
さらに、期待値は上がったものの少し気がかりなのが
主人公の女性が、飛び切り愛嬌のある笑顔で
走っていたポスターだった事である。
はて、彼女の話か。彼女が最悪な目に遭っているのが
想像つかない。
そして、鑑賞。
これ、「わたしは最悪。」ではなく
「わたしが最悪。」だった。
主人公がクズすぎて最悪の人物だったのだ。
(これは明らかに言い過ぎてるが、こんな掌返し感があった。勝手に想像膨らませたわたしが悪いが。)
始まり方は何となく好きでしたよ。
章立ててはじまっていく感じ。
(ただ、12章って多過ぎるよね…。)
しかし、内容はどうよ。
全体を通して言うと、
まず、映画への愛は感じるが余りにも詰め込みすぎて、
お腹いっぱいなのに、口に詰め込まれてる感が凄い。
(アニメーションは良かったけれども、
町中の時間が止まるシーンとかくど過ぎる。
お前らの為に世界は存在するんか。
「1秒先の彼女」の止まり方のがまだ良かったわ)
それと、SDGs全部やるんじゃないかってくらいの
広範囲の問題提起。
女性軽視や、環境問題、暴力描写、表現の自由。
画としても示すくせに、そのオチはぜんぶ
過激派ぽい人(フェミとかヨガとか)が出てきて終了。
それに対して主人公たちは、
やれやれ、、的な空気感。
なんじゃそりゃ!!!
それが現実社会の反応かもしれんけども!
そのレベルなら取り上げなくて良くない!?
主人公は男性との議論中も噛み付くように言い返すが、
それが何になる訳でもない。
なんだ?監督の言いたいこと言ってるだけ??
それって映画じゃないよ!
さらに、物語は後半につれ、その名の通り最悪に。
なんと、主人公の元彼が病気で死ぬと言う。
……まあ、ここまではいいよ。
で、そのあと主人公とダラダラと過ごして話して…。
こんなシーン要る!?
彼が死にゆくとき、何を想うかなんて
正直、知らないよ!
てか、あなたの事をそんなに知らないよ!
もう彼女には次の問題が訪れてるのに
今それに構ってる暇はないよ、、。
どれだけ絆があったか知らんけどさ…。
でも浮気で別れてるんやで…。
過去が未来がとか、これもどうせ監督の主観を
喋らせてるだけじゃん…とか思ってしまいました。
それでもって彼氏との妊娠の問題は
余りにも短くあっさりとしたシーンで終了。
え??
そして終章で、彼氏はまた別の人と…。
まあそれが人生なのかもしれないけど、
そのまま映画にしても、それは日記だよ。
(何年かぶりにイライラし過ぎて劇場を出たくなる現象に襲われた)
最後に、主人公の人間性について。
彼女は、本能に従うタイプで新しい物に目移りしがち。
ここまでは何も言う事ないのだが、
観客が、絶対するなよ、って事を平気でする。
それが愛すべきキャラではなく、
憎むべきキャラに出来上がってしまっているのだ。
ここに関して理由は分からないのだが、
おそらくは彼女すら彼女の選択に納得していないからだと思う。彼女も迷いつつ、しかし本能には従う形で行動している。そしてそれの仕打ちを被るのはいつも、彼女以外の誰かだ。
「わたしの最悪な行動により、周囲の人が不幸になる」
映画なのだ。
思えば、初めからそうだった。
彼氏の母親?は、彼女に勧められてダンスを始め、
そして怪我をした。
彼女の行動は、常に誰かを傷つける可能性を孕む。
それは、彼女自身も。(最後には流産してしまった)
しかしこれって社会の中で生きる人、
全員に言えることでは?
と書いていて、答えにぶち当たった感があるが、
それでもこの描き方は気に食わない。
もう少し、彼女の葛藤が見えれば…。
思い返してみると、彼女は友達がいない。
彼氏や家族と過ごす以外で、親しい友達がいない。
彼女は、そういう人なのかも。
周囲を傷つけるのを恐れているが、
本能には逆らえない。
と、まとまらなくなったが、
答えが出ても本作は好みでない。
でもこれは監督との相性とか
その辺の問題な気がします…。
それか私の心が狭い。
または、彼女の傷に気が付けなかった。
ただ、中盤で彼女が書いた記事、
「わたしは硬いのを"創る"のが好き」
って表現は、なるほどなーと。
今まで持っていた感覚を上手く言語化した感覚で、
物凄く腑に落ちたというか、ああそういう事か!
となりました。
主演の彼女は、体当たりな演技で良かった。
どこにいても絵になる。
そしてなんと言っても可愛らしい笑顔である。。
衣装も好みだったのだよな〜…。