劇場公開日 2022年7月1日

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「『パリ13区』にあった直視するのも痛々しい赤裸々も厭わない奔放さとそれに伴う重い代償をまとめて引き受ける優しさが印象的などこまでも美しいドラマ」わたしは最悪。 よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0『パリ13区』にあった直視するのも痛々しい赤裸々も厭わない奔放さとそれに伴う重い代償をまとめて引き受ける優しさが印象的などこまでも美しいドラマ

2022年7月2日
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鑑賞方法:映画館

原題はノルウェー語で“Verdens Verste Menneske“、直訳するとWorld’s Worst Personなのでこの邦題になったのは解りますが、映画にはそんな人間は一人も出てこないので主演のレナーテ・レインスベのインタビューを参照したところ、このフレーズはノルウェーにおける慣用句で自分が誰かを傷つけたり、または自分がやったことに満足出来なかった時に自虐的に吐き捨てる言葉だとのこと。頭を抱えながら「あーやっちゃった」と自戒することだと捉えると、直感で行動し出会った人に影響を受けてまたあさっての方向に弾けていく主人公ユリヤが延々と繰り返す身も蓋もない試行錯誤と重なります。この辺りの赤裸々な会話や奇行の数々やユリヤの家系やサーミ人の話などといったスパイシーなウィットがぎっしり詰まっているので、観ているこちらは苦笑させられたり顔が引きつったり大忙し。そんなユリヤはどこまでもチャーミングですが、彼女の周りにいる人達も個性的。悪い意味で印象的なのはユリヤの父ハラルド。面倒臭いことを避けるために言い訳をこれでもかと重ねて逃げる卑屈な感じがめちゃくちゃリアルでした。

世界はなぜかユリヤを中心に回り続けるので、ユリヤがスイッチ一つでオスロの街を静止させて軌道修正することも許します。アニメ版の『時をかける少女』や台湾のファンタジーコメディ『1秒先の彼女』にもあった表現ですがそれをファンタジーではないドラマの中にさりげなく挿入したところに、誰しも自分の意志で好きなタイミングで人生をやり直していいんだという優しい抱擁を感じました。しかしその代償は思いもよらぬ形で返ってくるというしっぺ返しもあるので、爽やかだけどずっしり重いドラマになっています。

過激な描写も厭わない奔放な演出は『パリ13区』とよく似ていますが、R18+だった『パリ〜』に対して本作はR15+。恣意的にも程があるレイティングは全くもって理解不能ですが、クリストファー・クロスの『風立ちぬ』やアート・ガーファンクルの『春の予感』(ちなみにボサノヴァの名曲『三月の水』のカバーですが、三月がブラジルの秋に当たることは無視されています)といった70’sポップスからのサントラチョイスが個人的にツボでした。

よね
よねさんのコメント
2022年7月18日

英題にただ引っ張られたんでしょうけど確かに印象がちょっと変わってしまうのはもったいない気はしますね。

よね
morihideさんのコメント
2022年7月18日

原題の意訳、良くわかります。
最初からそういう意味で見れば、少し違うように見えるかもです。

morihide
よねさんのコメント
2022年7月4日

すいません、タイポ指摘ありがとうございます。男にも生理があればいいのに!とか切れ味鋭いセリフがいっぱいあって爽快でした。

よね
iwaozさんのコメント
2022年7月3日

選曲センスが最高でしたね。^ ^
「1秒先の彼女」がタイって表示になってましたが、台湾の変換ミスですよね。日本の「恋は光」もリアルとは程遠いですが、ファンタジック論理的ロマンスコメディとして、なかなか面白かったです。
しかし、男は何かにつけて理論武装して自分の優位性を誇示したがるけど、それが我慢ならんっ!ていうのに非常に納得しました。
客観的に観るとひどい事してますよね。m(_ _)m

iwaoz