「【”聡明だが、移り気で我が道が見つからず、自分の人生の在り方を求めて2人の男の間を行き来する若き女性の心の成長と自立していく様を描いた作品。共感し難い生き方だが、冴えた演出は見応えある作品である。】」わたしは最悪。 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”聡明だが、移り気で我が道が見つからず、自分の人生の在り方を求めて2人の男の間を行き来する若き女性の心の成長と自立していく様を描いた作品。共感し難い生き方だが、冴えた演出は見応えある作品である。】
ー 原題が凄い。「THE WORST PERSON IN THE WORLD」である。どんな極悪な女性が描かれるのかと思いながら、劇場へ。
確かに、間違ってはいないけれど、自分の進むべきが見つからず煩悶する、可なり性に奔放で、パワー溢れ、根本はしっかりとした自我を持つ、女性ユリアの成長物語であった。
それにしても、ユリアに惹かれ関係性を持つ、40代の漫画家アクセルと若いアイヴィン。君らも大変だったな。あ、でも君らも愉しんでいたから良いか・・、などと思ってしまった作品である。-
◆感想
・冒頭からユリアの次々に興味を持った事に冷め、移り気していく姿が、その後の展開を予想させる。
・そして、出会ったアクセルとの年の差ありき恋。同居する事になった、アクセルは子を望むも、ユリアはその気になれない。でも、”する事”はする。
ー コラコラ。ついでにユリアが根本はしっかりとした自我を持つ、女性である事も分かる。ー
・そんなユリアの前に現れたアイヴィン君。パーティで意気投合しちゃって、”固くなる前が好き。だって固くするのは、私でしょう?”なんてユリアはアイヴィン君に言っているし・・。
果ては、お互いに小用を足す姿を見せ合ったりする。
ー コラコラコラコラ。お父さんは、そんな事は、赦しませんよ!-
・ユリアは、アクセルと、アイヴィン君に心惹かれ・・。
ー アクセルがユリアのために珈琲を入れている背中を見ながら、ユリアは部屋の電気を消す。その瞬間、街中の車、自転車、バイク、人々の総ての動きは止まり、ユリアのみがアイヴィン君の元へ、一心不乱に走るシーン。
見事な演出である。-
・ユリアはアクセルに別れを告げ、かといって恋人のいるアイヴィン君の元に行くわけでもなく、部屋を出る。
ー アクセルが、凄く可哀想に見えてしまったシーン。
健気なアクセルの憔悴しきった顔。
矢張り、ユリアは”THE WORST PERSON IN THE WORLD”かと一瞬思ったが、彼女は自分が決めた選択肢に従っただけなのだ、と思い直す。-
<アクセルは病に倒れ、ユリアは望まない妊娠をする。だが、子は流れアイヴィン君は恋人との間に子供を設け、幸せそうである。
そして、ユリアは写真家への道を歩んでいく。
ユリアの生き方は、ハッキリ言って我儘であるし、周囲を傷付けたりするし(可哀想なアクセル。女性蔑視の漫画を描いていた報いか?)、余り共感は出来ない。
だが、私は、今作は、一人の女性が自分の意思を貫き、少しづつ心が成長し、自立していく様を描いた作品ではないかと思ったのである。>