「自分以外の世界が止まって見える」わたしは最悪。 和田隆さんの映画レビュー(感想・評価)
自分以外の世界が止まって見える
“理想の人生”と“厳しい現実”の間で揺れながら、自分の気持ちに正直に生きていくことを選択していく女性の失敗と成長を描いた、ロマンティック・コメディタッチの恋愛ドラマである。
ヨアキム・トリアー監督は、遊び心溢れる独創的な映像と音楽で主人公ユリヤの心情を映し出す。彼女が芸術の都オスロを眺めながらひとり帰途につくシーンや、それまでの自分から解放されたかのような表情で街の中を駆けてゆくシーンが印象的だ。ユリヤを演じたレナーテ・レインスベは、まるでユリヤが自分の中のいくつかの人格と対話するかのように、子供のような無邪気さと愚かさ、さらに大人のずるさと賢さが混在する年代の感情の揺れ動きを、繊細かつ大胆な演技で表現している。
日常の中で時おり抱くある違和感。自分は何者なのか、なぜここにいるのか―。部屋の電気のスイッチを「パチン」と押した瞬間、抑えていた感情が彼女の中で弾ける。外へ飛び出すと、自分以外の世界が止まって見える。そんな街の中をゆっくりと駆けだしていくユリヤの表情が笑顔に変わっていく姿に世界が共感したのだろう。
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