「This is America 1970s to 1990s」フラッグ・デイ 父を想う日 redirさんの映画レビュー(感想・評価)
This is America 1970s to 1990s
またしても、いけてない邦題が残念。フラッグデイでいいのに!just leave it!!
とはいえ、ショーンペン様監督、主演作品なので他は文句ない。
冒頭のファミリームービー的な良い感じに古びて揺れる景色、、と思ったらファミリームービーという設定でら16ミリフィルムで撮影されたものらしい。どうりで、美しく魂に刺さる、その揺れる画面に冒頭から泣ける。
世間から見たらどうしようもないクズ男でダメ父である。
ドリーマーで自分をも騙してしまう詐欺師でだから人たらしなところもあり、一番たらし込んで騙し続けるのは自分自身という哀しさ。ジョンと言う男。ショーンがやるしかないし取るしかないしアメリカじゃないとあり得ない感じ。
これが自由ということか。自由奔放に自分の本能と本性を信じて生きようとするとこのようになんだか不自由なことになってしまい、そして家族などの大事なひとの自由を奪ってしまうのだ。自由とはめざせば目指すほどに遠のいてしまう。かつてデニスホッパー(またはデニスが演じていた役)もあくなき自由を追い求め彷徨い歩いて最後は自分を追い出していたように。
そんなことがワンシーンワンシーン、ジョン(ショーンペン)とジェニファー(ディランペン)の表情、街の風景、家などから滲み出てくる。
ジョンの脳天気とも言えるお調子者、無意識の詐欺師、人生に絶望しながらまたすぐ都合良き希望を見出す、嫌なことはしたくない、自由気ままに生きたい。
ジェニファーは、ジャーナリズムそれも調査報道を目指すというのも、なんか、この父親の掴みどころのなさに、なんか本当のことを知りたいという気持ちが湧いたのか。
息子のニック(だったかな)これも大人のニックはショーンの息子のホッパージャックが演じているが彼は何となく凡庸な人凡庸で優しく温かい存在になっていて、彼が一番平穏な生活の中で、母親を支えながら、実は自由に呼吸できているのかもしれない。
冒頭からレコード針が落ち優雅に詐欺的にかかるショパンのノクターン、そのあとは各年代風に音楽が変わっていくのもアメリカだし子どもの頃もその後も、ジョンの誕生日であるアメリカのフラッグデーのパレードの様子は変わらない風景でもあるようだ。ノクターンは、ジョンの夢見る世界なのかな。
道路沿いのダイナーの看板、麦畑、美しい湖畔の小屋、昔ながらのものが少しずつ古びていく中ジョンも肉体は老いて行くが、昔のダイナーの看板みたいになんか楽しくなんか上手く行くって自分を信じ込ませようとしているのか。
信じられないジェニファー。信じたい気持ちもするジェニファー。真実をやがて知り受け入れ愛おしく理解するジェニファー。その時よりそう警官がジェニファーの肩を励ます様に掴む。
ジェニファーは母親が言う通り、ジョンは嘘つきなのかもダメなのかも思いながらも、なにか支えが必要。バスの中疲れてつい眠り込み隣の知らない男に寄りかかるシーン。
どんな人にも、その人なりのストーリーがあり、その人なりのストーリーによりかかり、リーンオンして生きている。
個人的には、えんじ色のシボレーのステーションワゴンもツボであった。
ショーンありがとう、今回もありがとうと言いたい。
道路沿いの楽しみや幸せを呼びかける大きなダイナーの看板、金色の麦畑。ダイナーの看板は古びて朽ち果てていき金色の麦畑で父を思う。
これってほんとにアメリカだよなって思う。