劇場公開日 2023年2月17日

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ベネデッタのレビュー・感想・評価

全106件中、21~40件目を表示

3.5ラスプーチン?

2023年11月7日
PCから投稿

ダニー・ケイの映画に虹を掴む男(1947)というのがある。後年ベン・スティラー主演でLIFE!/ライフ(2013)としてリメイクされたが、原題はどちらもThe Secret Life of Walter Mittyである。スティラー版をご覧になった方は多いと思うが主人公ウォルター・ミティには重篤な妄想癖がある。妄想というより白昼夢という感じでいったん入り込むとまるで幽体離脱しているかのように現実生活が疎かになる。妄想の中に住むウォルター・ミティ、ゆえにThe Secret Life of Walter Mittyなわけである。

ベネデッタを簡単にいうと妄想癖をもった女がまきおこした騒動である。妙な解釈に思われるかもしれないが、一連の事件は奇跡が信じられている17世紀の修道院ならじゅうぶんに有り得る。加えてベネデッタはメンヘラを患っている。もともとなにかと小賢しい(こざかしい)少女だったのが、禁欲的な修道院という特殊環境で精神疾患(メンヘラ)が伸び伸びと増長し、且つ妄想癖と合体し、ベネデッタというトンデモ女がうまれてしまった──という話である。

こういったメンヘラ女(男でもいいが)は案外珍しい存在ではなく、わたしたちの身の周りや著名人の界隈にもいる。彼女(彼)は腐った果実のようにたったひとりで周囲の健全な人々を精神的にあるいは肉体的に破壊していく。あたかも謀略のようだが、本人は無自覚だ。謂わば「自作自演という天然」をもった怪物である。

ベネデッタの惑乱は教区にいることでさらに増長する。さまざまな現象に対して信者らは“神の意思”をからませるからだ。
彗星が降ってくるシーンでは神がお怒りだと言って恐れおののく。ペストだって神の怒りである。こういった神憑り・迷信によってかれらは怯懦である反面、みずからの欲望が犯したことの申し開きにも神は使われる。

たとえばサドのジュスティーヌで悪徳僧侶たちはジュスティーヌを凌辱するたびにそれを主のせいにする。性欲をコントロールできなかったのは主の御心かもしれない──という曲解によって責任のがれをはかりみずからの精神的安寧を保つわけである。

聖職者にはある種の欺瞞があると思う。

たとえば遠藤周作の沈黙という小説がある。小説よりスコセッシの映画として知られているかもしれないが、沈黙は誰が沈黙しているのか──といえば“神”である。残酷な宗教弾圧に遭いながら、神に忠信を尽くしているのに神はいっこうに応えてくれない。その状態を“沈黙”と言ったのだ。ヴィスコンティやベルイマンが使った“神々の黄昏”とか“神の不在”も同様に「人間界は神がいないかのようにヒドいor愚かしい」ということを示している。しかし“神”なんて現実には存在しないのだから応えないのは当然である。

ところが宗教信者は人間が悪をはたらいたり自らが救われないことを神がいないからだ──という立脚点をとる。その依存を欺瞞だと言っているのだ。
やがて、世の悪を神のせいにするばかりか、みずからの犯した悪をも神のせいにする。宗教信者にはそのような欺瞞が生じやすい。(のではなかろうか。)

いま行われている戦争もそうだが信者・宗教人というものはあるていど“神のせいにする人たち”という見地をもったほうがいい。

そのように現実をも曲解する信心によってベネデッタの奇行が守られたことでベネデッタは一時的にせよ恣(ほしいまま)の状況をつくることができたのだった。

反対に、ランプリングが演じているフェリシタ修道院長はまともな人間性をもっている。少女時代のベネデッタにマリア像が倒れてきたにもかかわらず無傷だった──という出来事があったとき、娘のクリスティーナにこう言った。
「奇跡なんてキノコみたいにやたら生えてるもんじゃない。それに想像以上にやっかいなものよ。」
フェリシタ修道院長は立場上奇跡じたいは否定しないものの奇跡なんてものはあり得ないという現実主義に立っている。宗教人なら信者である前にまっとうな人間であることが必要だという亀鑑のような存在だ。しかし、まともであればあるほどメンヘラには脆い。そういう理不尽が描かれている。

したがって映画の紹介には同性愛のことがメインに揚げられているが、ご覧のとおり、ベネデッタで強烈なのは同性愛が描かれていることではなく、たった一果のメンヘラ女がまっとうな人間たちを駆逐してしまうこと、むしろそれを主題とした映画、言ってみりゃラスプーチンの女版といえる。

imdb6.7、RottenTomatoes84%と90%。
アメリカの歴史家Judith C. Brownの著作「不謹慎な行為: ルネサンス期イタリアのレズビアン修道女の生涯」をアレンジしてある──とのこと。

バーホーベンは復調が継続しておりオランダ時代のように生生しいが、わざと露悪・扇情的なつくりという感じはあった。

ベネデッタは自作自演に無自覚だが自身が神の嫁であるという境遇について疑いをもっていなかった。すなわち無敵だった。が、時代も彼女を神のつかいとみなすような時代だった。真面目なつくりだが前作エルみたいな一種のブラックコメディといえる。(と思った。)

見応えはあったが不愉快な女だった。w。

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津次郎

3.5神の声を聞き、神の姿を見るベネデッタ

2023年10月13日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

真実か?虚言か?病か?
修道女ベネデッタ。
その揺るぎのない強さに、信仰の危うさを感じる自分がいました。
ベネデッタの行いは自分本位で《我こそ神なり》
神がかり(憑依?)的な聖女(魔女?)
全ての行動が裏表です。
神を信じていれば肉欲に溺れることも、なんの疑いも感じない。
神の声を聞き、ベネデッタの内から神が男の声で啓示を語るのですから・・・
(宗教全般に疎く信仰も持たない私です)
この映画、ポール・バーホーベンの世界は
《宗教は何でも有り》
裏切りも密告も嫉妬も策略も聖職者の政治力に利用される。

ベネデッタが神の声を聞き、聖痕が身体に現れたことにより、
修道長にまで昇り詰めて行く。
元修道長(シャーロット・ランプリング)は面白くない。
ローマ教皇大使(ランベール・ウィルソン)にベネデッタの同性愛行為を
糾弾に赴く。
そしてベネデッタの《火刑》のスッタモンダ!!

エネルギーに溢れた映画です。
ポール・バーホーベンの本領発揮・・・
過剰な性描写!
アレレと思う宗教観!
絢爛豪華な中世の映像美。
美しいBGMの宗教音楽と女声のミサ曲。
最後まで楽しませて貰いましたが、
こんなドロドロでギドギドの油ぎった宗教映画に疑問も?
薄っぺらい感じもします。

エンタメでサービス満点。
さすがのバーホーベン監督作でした。

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琥珀糖

2.0日本では江戸時代

2023年9月6日
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鑑賞方法:DVD/BD

サイト評価から鑑賞。美しくも真実味がある背景が妖艶さを際立たせている。傷とか、声とか、捧げるとか、内容的にもストーリーには入り込めず、ただ眺めるだけだった。

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げっちゃん

4.0すごい人もいたんだなあ。

2023年8月26日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

怖い

実在した修道女の話。8歳で出家し、数々の幻視をみて、聖痕が現れる。それらを啓示と受取り修道院での地位を高めてゆく。が、同時に禁じられた欲望も解き放たれて…。
聖痕は果たして本物なのか?本物とはなんなのか?本人のみぞ知るところであるが、数々の"奇跡"はまさに狂った信者そのものであり面白い。一種のギャグにはなっているがバカにしているわけでもなく、キャラクターそれぞれがマジなので、面白おかしさの純度が高まり笑える。エピローグにはベネデッタの人間味溢れる行動も感じとれ、良いものを観たなあといった感想。舞台やあらすじなどで小難しく感じるかもしれないが、案外観やすく良い映画です。

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ezio

4.0超絶!意地悪ブラックコメディー!!

2023年8月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

知的

映像が美しいですね。
ほぼ中世の宗教画、そのまんま。
中世のシスターの話と言うと堅苦しいのかな?と
思いきや、なんと言う俗っぽくて生臭い映画か(爆笑)

主人公のベネデッタ!
始まりからこの子、思い込み激し過ぎてやばくね?
と、思わされるエピソードが詰め込まれます。
修道院の生活の中でも、
そこそこ裕福な暮らしをしていたらしい少女にとっては
結構きつい暮らしが続くので、
自分はイエス・キリストと特別な絆があると言う思い込みを
更に強く持つようになってゆく。

その行動、果たして本当に思い込みか?
それとも全て演技なのか?

最初はそこが気になるのだけど話が進むうちに
ベネデッタよりもその周囲の権力者達が
己の特権と利益に群がりしがみつく、
醜さの方がどんどんとクローズアップされて
肉らしさを通り越して笑えて来てしまう。

中世の世界を完全再現した贅沢なルックに隠された
超絶!意地悪ブラックコメディーです。

で、月に8回程映画館で映画を観る中途半端な映画好きとしては

鬼才ポール・バーホーベン監督
1938年7月18日 御歳85歳!
撮影は1年とか2年とか以前としても80歳過ぎた監督の
作品とはとても思えない画面上の妥協の無さ!
加えていい意味で予想を裏切る展開!
実在した修道女の記録と言う時点で驚きだけど、
それを更に監督の味付けが、生々しくも可笑しいシーンへと
仕上げられて、観る者を退屈させない。

例えば、ベネデッタとベネデッタが助けたある少女とのシーン。
終わったらこれで〇〇するのよ。
と言いながら、壁一面に積み上げられた藁の束から
一掴み引き出してそれをするシーン(爆笑)
確かにこの時代ならそうなるわね。

更に末端の修道女達には質素、倹約、禁欲を強いていながら
自分の食卓には山ほどのご馳走様を並べて、
出てきた妻は妊娠中!と言う権力者の振る舞い!
なんだよ!この俗物野郎!!
とことん権力者の欺瞞を嘲笑う監督の目線。

「ロボコップ」の一作目と
前作の「エル」の時も思ったのだけど、
ウディ・アレン監督の様に、若い女性を理想化したり
偏った愛し方をするでも無く、
女性の美しい面も狡い面も同じように人として描く
バーホーベン監督の女性を観る目が好きです。

年齢が心配ですが次回作も期待していたい。
ずっと待っていたいですね。

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星のナターシャnova

4.0バーホーベンの良い方

2023年7月30日
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ちょうど良いエロさ。ホンモノのベネデッタも聖痕はウソだったのだろうか?そもそもホンモノの聖痕なんてあるのだろうか?シャーロット・ランプリングが良すぎます。

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三毛猫泣太郎

2.0尼僧ポルノと本格史劇。

2023年7月13日
iPhoneアプリから投稿

尼僧ポルノと本格史劇の掛け合わせはバホ弁に撮らせたいが、
両者とも浅くどっち付かず。
群衆シーンのチープさも。
期待したバホ弁臭も薄い。
だから非支持。

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きねまっきい

4.0行き過ぎた信仰心

2023年7月5日
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鑑賞方法:DVD/BD

笑える

怖い

知的

中世のヨーロッパの時代においては、修道女になるには、お金💰が要る事にびっくり‼️
ベネデッタは、裕福な家庭に居ながら修道院に行くのはなんとも、凄い時代😵‍💫
そこで、ベネデッタが登り積めるために偽りや、欲望をこれでもかと、生々しく描いた監督に降参🏳️
面白い🤣🤣

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アキより

4.5ポール・ヴァーホーベン節が鳴り響いていて最高、とポール・シュレイダ...

2023年6月28日
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鑑賞方法:映画館

ポール・ヴァーホーベン節が鳴り響いていて最高、とポール・シュレイダーの『カード・カウンター』と同じ感想になりますが後期高齢者の監督がやりたい放題やってるのはやはり良いものです。

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teraox

3.0あんなデカい声はばれるでしょう?

2023年6月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

個人的にノストラダムスの大予言を信じていたたちなので
ハレー彗星が来るたびに世の中が混乱する
ペストは土葬するな、酒で消毒せよてのは
あーこういう時代だったんやな、と目に焼き付きましたね。
そんな英知を超えた彗星、伝染病などは神の思し召し
といった当時の雰囲気が全編から感じられ面白かったです。
またエロ全開はいいんだけど
こんな自分勝手な女を舎弟にしたら自分のクビも締まるよ
もうちょっと選べよ、と思ったりしました。
60点
5
アップリンク京都 20230225

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NWFchamp1973

5.017世紀の凄惨極まりない現実を生々しく下品に活写する、実にヴァーホーヴェンらしい大傑作

2023年6月19日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

修道院に向かう途中で幼いベネデッタに起こるアホみたいにベタな奇跡から始まってグッチャグチャになるクライマックスの惨劇まで延々と繰り返されるインモラルなギャグに爆笑しまくりましたが他に笑ってる人がいなくて寂しかったです。イタリアの話なのにセリフは全部フランス語、ほぼ全編ドリフの大爆笑を真顔でなぞってるみたいなデタラメなのにでもこれ全部史実だよ?とせせら笑いながら叩きつけてくるヴァーホーヴェン師匠の大昔から変わらぬ底意地の悪さに圧倒されました。

ポスタービジュアルも実に素晴らしい。70年代のジャーロ映画風な邦題デザインからしてイタリア汁が滲み出してますし、この主人公の出立ち、恐らくはルルドの聖母ことベルナデッタの亡骸に似せてるんじゃないかと。『氷の微笑』『ショーガール』『ブラックブック』『エル ELLE』の系譜と監督自らおっしゃってる通りの作品、圧倒的に不利な状況なら反則したっていいだろ、そもそも社会がデタラメなんだからとでも言わんばかりの雄弁さが清々しい。個人的には『ロボコップ』のアン・ルイス巡査もそこに並べたいところです。

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よね

4.5徹頭徹尾

2023年5月10日
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鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

興奮

娯楽作品に仕上げている所が、信頼出来るのと作家性。ヴァーホーヴェンの宗狂に対するシニカルさにニヤニヤさせられたが、ラストやっぱりヨーロピアンの根っ子なのかな?

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トミー

3.5何がいちばん攻められたのか…

2023年5月3日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

神を信じると言うことはこういう事なんだ、と。見えることが全て真実ではないという事をくっきり描いていてわかりやすい。レズビアン主義を攻められたというよりは修道院長になる過程のエゴやエロとかがメイン。キリストとベネデッタの関わりをくっきり映像で表現しているのがヴァンボーベンっぽくてあきない。興味深く面白くみれた。

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peanuts

3.5やったぜ全員悪者

2023年5月3日
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鑑賞方法:映画館

ベテラン監督が匠の技で人間の業みたいなヤツをじっくりコトコトことこと煮込んで灰汁抜きとか全くせずに出してきて、どうしてこれがこんなに面白い映画になっちゃうんだっていう感じで、非常に良かったです。
エロも当然なんだけど、皆醜かったなー。
これとっても褒め言葉です。
当然コロナウイルスの怖さが身に沁みてる現代の我々からすると当時の民衆の恐怖は他人事ではない、そしてそれを自分のために利用する統治者の思惑の怖さもあり、うーん見事って感じ。
1番近いのは北野映画のアウトレイジシリーズかなって思って観てました。

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あした

3.0信じる人

Mさん
2023年4月8日
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私にもう少しキリスト教の素養があれば、もう少し深く理解できたのだろう。
この映画に、信じる人の強さと怖さを見た。

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M

3.0ヒーローはイケメンでなければ許さない女

2023年4月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

知的

劇場型のシスターが成り行きで昇進し街をも巻き込んでいく話。
LGBT要素あり。

良い点
・話術
・異を唱える者、利用する者など様々な立場の交錯

悪い点
とくになし

その他点
・ばち当たり

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猪古都

5.0タイトルなし

2023年4月1日
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鑑賞方法:映画館

 聖女の話はヒステリーの女性たちの話として興味があった。ベネディクトは、レズビアンとの両立という意味で興味深い。
 前修道院長が神を信じていなかったのに、最後は火の中に入っていくところはすごい。さすがランプリング。
 拷問も規則もキリスト教のおぞましい側面が描かれる。腐敗も。その中にある奇跡という、相容れない現象。
 ほとんど妄想のように見えつつ、そもそも信仰とは、妄想が力を持つことだと彼女自身が最後に語る。
 民衆がベネデッタを救いに襲いかかるシーンが何とも感動的なのだった。

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えみり

4.0イタリアのおとぎばなし。

2023年3月29日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

芸術的な狂信的なフランス語のおとぎばなし。

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kubonbich

4.5中世教会のリアリティ

2023年3月25日
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鑑賞方法:映画館

日本人には理解が難しい中世の教会の現実。
教会の影響力がわかる映画で、大変中世のキリスト教の支配の実態がよくわかる。
映像もリアリティがあり、現実に対する理解が進む。

バーホーベン監督だから表現できる映像でした。

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morihide

3.0シャーロランプリング愛する

2023年3月18日
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鑑賞方法:映画館

シャーロランプリング愛する

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