「やっぱりすごい」ベネデッタ ヘルスポーンさんの映画レビュー(感想・評価)
やっぱりすごい
ポール・バーホーベン監督の最新作が映画館で観れるという喜びを感じつつ、2021年に海外で公開されてから2年越しの日本公開で、やっと映画館で観れた!!という気持ちの方が強い笑 一時はビデオスルーになるかと思いました。
相変わらず良い人だろうが悪い人だろうが容赦なくボコボコにして描くポール・バーホーベン作!!
「スターシップ・トゥルーパーズ」だったり茶化してるのか、本気なのか分からない映画を撮るのが上手い!絶対に(100%!!)茶化しているんですが、本気で信じ込んでいる人には本気の映画になっているように作ってるし、「ブラック・ブック」や「ELLE」のように女性が差別や権力に反旗を翻す映画にもなっている。
また、本当なのか嘘なのか、最後まで分からない、この映画として答えを出さないというのもバーホーベン監督らしく、「トータル・リコール」でも「氷の微笑」でも嘘か本当か?どっちか分からないし、
「ブラック・ブック」ではナチス側もユダヤ人側からも差別を受ける主人公を描く、どちらが悪いかは描かない。非常に冷徹でフラットでフェアな監督だと思っています。
バーホーベン作の特長として、"まともな人が1人もいない"か、"1番まともそうな人が死ぬ"というのがあると思いますが、本作は後者で、とある人物が自害するシーンは衝撃的。まさに神の言葉(的な)ものに従ったが為に、1番大切な人を失うというもうどうしようもない悲しいシーンがあるのですが、このシーンでシスターフェリシタを演じるのは大ベテラン女優シャーロット・ランプリングで、このシスターフェリシタの境遇だったりラストに至るまで辛い。
主人公は幼少期より自分にたまたま起こった出来事を神の啓示と結びつけてしまい(最初の神の啓示が鳥の糞というのも馬鹿にしまくっていて最高です笑)、それゆえに一種の妄想に取り憑かれてしまう。ベネデッタは自分の見るビジョンが神からの啓示であることを最後まで一切疑わない。ここまでいくとある意味清々しく、ラストシーンの勇ましさと馬鹿馬鹿しさが共存する彼女の後ろ姿はどんな感情で観れば良いのかわからない笑
また、神からの言葉ということが当時の教会で女性が発言力を持つ唯一の方法であったことと、その言葉がある意味荒唐無稽なことであっても神の言葉ということであれば(それが怪しいと気付きつつも)従わねばならないというルールのバカバカしさを映画としてしっかりみせてくれます。こんな狂った世界で最初に死ぬのはやっぱり1番まともな人なんです笑 さすが、バーホーベン監督。
パンフレットやポスターまで、ポール・バーホーベンが大好きな高橋ヨシキさんデザインで、さすがの出来でした。
色んな批判を受けても全く映画スタイルを変えない84歳のポール・バーホーベンを見ているだけで1番元気が出ます笑