ストーリー・オブ・マイ・ワイフのレビュー・感想・評価
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ラスト付近までネタバレなし、最後にネタバレブロックありです。
クジラは陸では生きられない。だが、陸での暮らしを夢見るクジラもいる。
主人公は武骨な海の男です。冒頭、クジラが暗い海を舞うように泳ぐ。そこに男の独白が重なっていきます。
男はクジラのような存在で、彼が語る7章から成る物語は、夢のようにも思えます。詩情豊かな映像美。そして「妻の物語」のはかなさが、夢を見ている感覚にさせるのかもしれません。
1942年に出版されたハンガリーの作家ミラン・フストの小説を、「心と体と」でベルリン国際映画祭金熊賞を受賞した同国のイルディコー・エニエディ監督が映画化。20年代の欧州を舞台に一組の男女の遍歴を描く文芸調のメロドラマに、ヒロインを演じたレア・セドゥが現代の息づかいを吹き込んでくれました。
1920年。船長ヤコブ(バイス・ナバー)は海の上では一国の王のようでした。
乗組員は家来のように船長室まで食事を運んできてくれます。だがどうも最近、体が不調でした。料理人に健康の秘訣を聞くと彼はこう答えます、「妻がいるので」。
そんなヤコブの結婚は、出会いから夢のように奇妙だったのです。
ヤコブは寄港先の地中海のマルタ共和国の友人といたカフェで、「最初に入ってきた女性と結婚する」と賭けをします。そして現れたリジー(レア・セドウ)はヤコブの唐突な求婚を受け入れます。そこからヤコブの甘美な夢が、同時に、苦悩に満ちた悪夢が始まったのでした。
こんな即席の出会いは、当然ただでは済みません。
ヤコブはパリで妻と暮し始めます。彼女はミステリアスで、とらえどころがありません。誘われるままに妻と夜のパリをさまよいますが、カフェにたむろする妻の友人だちとはなじめませんでした。だいいちフランス語もよくわかりません。妻といやに親しげなデダン(ルイ・ガレル)が現れると、無性に不在時の妻の行動が気にかかるようになってくるのです。海では瞬時に正しい判断を下し、船長として尊敬されるヤコブでしたが、ここではすっかり陸のクジラなのと成りはててしまいました。船とは違い、ヤコブの人生航路は暗礁に乗りあげてしまったのです。
捕まえたと思うと逃げられ、突き放そうとして離れられない。男たるものかくあらねばと賑る舞うヤコブは、リジーに翻弄されるばかり。登場した時の頼りがいのある船長は、次第に器の小さい男に成り下がっていきます。
リジーは貞淑な妻か、それとも放埓な悪女か?
ヤコブは自分とは違う世界に生きる妻を理解しようとして、苦しみ、悩んだのでした。そんなヤコブに、妻から少しは遊ぶように言われ、他の女性に手を出そうともします。だが誠実さを絵に描いたようなヤコブはうまくいきませんでした。次第に追い詰められていきまる。
彼は嫉妬の果てに自殺未遂を起こしてしまうのでした。
カメラはヤコブの視点から離れず、リジーの素性や素行は観客にも謎のまま。純粋とも小悪魔とも映るリジーが、愚かで哀れな男の本性をむき出しにしていきます。
その目に映るリジーは、パリの街そのもの。退廃的で美しい夜のカフェの場面からは、香水の香りが濃厚に漂ってくるのでした。
一方、2人が求め合う場面は絵画のようにスタイリッシュ。エロチックですが、生々しさは感じられません。いくら体を重ねてもどこか捉えどころがない妻にたいするもどかしいヤコブの気持ちが込められていたのではないでしょうか。特にセドゥの全裸の後ろ姿が美しすぎるます(^^ゞ二人の愛を音楽の強弱だけで現していたところもロマンチックでした。エニェディは2人の間にある深い淵をじっくりとのぞき込み、繊細な美意識に貫かれた映像で映し出します。
男らしさにとらわれた夫の目がジェラシーや疑心で曇ってしまった時、見えるはずのものが見えなくなってしまったのか、それとも妻は本当に不貞を働いているのか。長尺でありながら最後まで見る者を引きつける愛のミステリーとして成立しているのは、謎めいた女性に実在感を与えるセドウの圧倒的な存在感によるところが大きいと思います。
とにかく、あんな謎めいた微笑と一瞬で表情を変えるまなざしに見つめられたら、ヤコブでなくたって、世の殿方はみんながとりこになるのも無理はないでしょう(^^ゞ
ヤコブはまるで迷宮に入り込んだかのように。出口は結局、最後まで見つかりません。見つからないまま、ヤコブは悟ります。迷宮をさまよい続けることが人生なんだと。人と人、文化と文化のはざまで、ただ迷い続けること。それが恋愛というものの美しさなのかもしれません。
【ここからネタバレが含まれます】
2時間49分の長尺と、美しく端正な映像で織りあげられるのは1組の夫婦の物語だが、それと同時にそれを超えた〈何か〉を感じられた人は幸いです。
ともかく冷めた目で眺めれば、疑わしいのはドッチもドッチで二人の度が行き過ぎた行いは五分五分というべきでしょう。そして3時間にわたる長いメロドラマの、そこで繰り広げられる物語があまりにも陳腐過ぎると、わたしのような野暮なオヤジには感じてしまったのです(^^ゞ
だいたいこれは、早い話が「男の私小説的愚痴話」でしょう。ヤコブが勝手に抱く妄想や愚痴以上に描けていないがゆえに、女が存在感のある生きてる人物とならないわけです。それがやりたかったこととするのであれば、それはあまりにもエニエディ監督はナルシストではないでしょうか。
冒頭とエンディングの男ヤコブのナレーションを手がかりにすれば、もしかしたらヤコブには本当のリジーの記憶がなく、自らに都合のいい記憶、つまりは妄想に生きていただけなのかもしれません。映画全体の中でリジーの異質さを考えれば、すでにヤコブは現実を見ていない脳内妄想のリジーを追いかけていると読み取るのもアリでしょう。
映画は7章立てで描かれていきます。1章から6章までがどんなタイトルであったかはまったく記憶していませんが、というより果たして意味があったのかも疑問なんですが、7章だけは「7年後」として使われていましたので記憶しています。
7年後、ヤコブはパリの街でリジーを見かけ、リジーから紹介されていた女性に電話をします。女性は、リジーがずっとあなたを愛していたとも告げます。それは散々嫉妬で狂ったあげくの、男にとってはあまりにも都合のいい終え方ではないでしょうか。
男が自分の思うようにならない女に、惚れているがゆえに執着し、嫉妬し、自己崩壊しましたという物語を3時間かかって延々と見せてました。それだけなら笑ってすませられるでしょう。しかしこの映画は、最後に、女にごめんなさいと謝ったように想起させるのです。さらにその女をなんの説明もなく、なきものにして、男の自尊心を保たたせることで終わらせてしまいました。
ということで映画鑑賞において高い感性に自信をお持ちでない人が、本作をごらんになると、「さっぱりわからん」「長い、疲れた」ということになりやすいので、ご注意申し上げます。
・日本公開日: 2022年8月12日
・上映時間:2時間49分。
これは疲れる。
ミステリアスな女性は魅惑的で惹かれるけど、伴侶となると疲れるよなぁ~。伴侶には心が休まる女性が良い。
まあまあ面白くはあったけど、このストーリーで169分はちょっと長いなぁ~。好きなレア・セドゥをたっぷり堪能できたからいいけど。
好きよキャプテン
1940年に発表された1920年代が舞台のハンガリーの小説の映画化。
男盛りの貨物船の船長がマルタ島のカフェで悪徳商人の友人に口からでまかせ気味に言った「次にこの店に入ってきた女と結婚する」をすぐさま実行することから始まる苦悩に満ちたお話し。老いた料理番に「体の不調の原因は結婚していないから。永年の不摂生がたたったせいだ」と言われたのが気になったからか。特別待遇を受ける船長の食事はカラダに良さそうだったけど。
レア・セドゥのは謎の女。
1920年代にしてはレア・セドゥは垢抜け過ぎていて、レトロな感覚には浸れませんでした。
一方、なかなか渋い船長は経験も豊富で仕事は一流。地位もある。しかし、いい歳して?いい歳だから?大博打に出た。がらんとした新居のフロアーにマットレス一枚で始まった新婚生活。うまく出航したにみえたが、女の舵取りは難しかった。しょっぱい結果に。
「しょっぱい海を越えて」の歌唱がなかなか素晴らしく、よかったです。エンディングにも流れたし、テーマなんですね。
デダン役の俳優さん、オフィサーアンドスパイ(ドリュフス事件の映画)で主役だったけど、眼鏡のあるなしで印象が全然違った。細川俊之をうんと濃くしたような感じだった。年がバレるね。
歳の離れた嫁さんを貰ったはいいが、残業でなかなか帰れない中間管理職がやっとウチに帰ったら、知らないブランドハンドバックがたくさんあって、嫁は若い男をあげていたたみたいな悲哀を感じてしまいました。しょっぱい話で、帰る足どりも重かった。
上演回数がどんどん減って、早めに打ち切りになりそうなので、慌てて見ました。
豪華客船のメイドのうぶな彼女にしときゃ良かったのにね。
わたしはレア・セドゥはタイプじゃありません。でも、フランスの女優さんで背中のセクシーな人はタイプです。
レア・セドゥ主演作品
思っていたとおり、レア・セドゥを鑑賞するための作品でした。
ストーリーを含めたその他の点には期待していなかったのでレア・セドゥファンとしては満足のいく作品。
3時間近い上映時間も長く感じなかったのは
やはりレア・セドゥの存在感に他ならないのでしょう。
75
一番身近な《他人》のことがわからなくなったら観るべき良作
耐久169分という社畜と奥様と受験生を始め全人類泣かせの上映時間の長さでありながら、最後の最後まで飽きさせない展開。素晴らしい。全体的に場面を長尺で撮ることがなく(夫婦の仲良シーンだけは長かったが)、テンポ良く場面場面が切り替わっていくため、悪く言えば軽すぎるが良く言えば一場面に足を取られることもないため、非常に観やすい。この辺、最近の時間ばかりが長い中身の薄い以下省略。
ざっくり言うと堅実派の仕事人夫vs奔放かつ享楽主義妻の話。なおこの2人は恋愛結婚ではなく、主人公夫が「なんか次に店に入ってきた女子と結婚するわフフフフーン」とか言ってマジでその言葉を完遂させた結果による。来たのがレアセドゥだったので結婚したけど、実際温水洋一氏みたいなご尊顔の女子なら絶対考え直したやろ自分と全力でツッコミ入れるのがこの映画の冒頭部分です。温水洋一氏に失礼。
なおこのレアセドゥですが、深掘りするとネタバレになるので控えますが、最初っから謎の女でしかないです。素性もわからなければ本人も話す気がさらさらない。唯一わかることといえば、よく言われるテンプレフランス人女性というところでしょうか。これ本当全部が全部こういうタイプじゃないと思うんすけど。どうなんよ。
一方の主人公夫。田舎の出で社交界とか全く知らん現場一筋の船長ですね。しょっちゅうリバースしてますけど、腕と勘は確かみたいです。なお船の操縦はうまいですが、能力は仕事部分に全振りしてるようですね。詳しくは言うまい。
この2人の腹の底の攻防戦と言いますが、夫婦なのに激熱な心理戦が繰り広げられるのですが、セリフではなくちょっとした描写やBGMで代弁させているのがホント、ハイセンスです。私、滅多に映画にセンスを求めない奴ですが、この映画に関してはストーリーからカメラワーク、キャスティングから描写の運びまで全てがセンスの塊と言うしかないです。絶賛です。
一番身近な他人に対して、一体何を信じれば良いのか。そんなことがわからなくなったら見返しておきたい良作。
レアセドゥの代表作と言っても過言ではないかと思われます。
夫婦間の痴話喧嘩に3時間もつき合わせるとは!
まさかのコロナ検査で、陽性判定。十日間も自宅待機で映画館での鑑賞ができなくなるとは。
幸いにもどうしても観たい映画がなくて、救われた。「ワンダ」が上映終了となってしまい、心残りだ。もう、日本で上映はないだろう。DVD化も難しそうだ。
待機が終わったので、映画館に出掛けた。朝日新聞夕刊の映画評を読んで、観る気になった。いつものことながら、持ち上げ過ぎである。妻が浮気をしているかもしれないと疑う夫の物語に、3時間近くもつき合わせる映画監督に呆れた。
主演の女優さんは魅力的だったが、こんな凡作に出演しても、名誉にならないよの言いたい。
映画では珍しくブルックナーの交響曲が使われて、ちょっと驚いた。夫婦のセックス場面に流れて、効果的だった。4番は久しく聴いていなかった。
はい、レアセドゥーファンです。
船長さん何歳の設定なんだろう
映画で髭がすごかったから50くらいいってるのかと思ってて、それで若い女性を選ぶから、
大丈夫〜?年を考えて…って目線から入っちゃった笑
で俳優さんの実年齢見たら思ったより若くて!あれ!おじさんの演技すごい上手!ってなった笑 貫禄がすごかった…!
男性目線でしか描かれないから、所々わからないシーンがあって、なんで女性はこんなことしたのか?とか、解釈しきれてないけど
愛があったとしてもすれ違うことがあるから、関係の維持ってむずいなあと、しみじみ思った
7つの教訓?みたいな、ストーリー仕立てもなかなかよかった
長いから見疲れはしたけど、見てよかった
意外に面白い
話が長く、目でみて解りやすいものでは無いが、心理戦みたいな男と女のせめぎ合いが面白い。
寝るかなと思いきや、どうしてどうして…気が付けば…7章までアッという間でした。
恐らく、一目惚れしたのはリジーも同様だと思う。夫を手で転がして弄ぶように嬲っているようで、実は夫の愛を試してる、確認してるのてば無いかと思いました。ラストあたりの旅行もついたら向こうに仲間がいて、いつものように騒いでるだけのような気がします。それが真面目な故に嫉妬と猜疑心に舵をとられ…
リジーはなんだかんだで結構嫉妬深い。遊べと言ってる割にボドボドにとネクタイ締めながら会話するシーンは浮気したら絞め殺すって脅しているように感じました。遊んでるアバズレ女を演じてる貞淑な妻だったのでは?
ヤコブが語る「妻リジーの物語」
ばら積み貨物船のベテラン船長ヤコブ(ジェイコブ/ジャック)。食後の胃痛を料理長に相談すると「そりゃ、船乗りの職業病だ。結婚しなさい」とアドバイスを受け、まさかの展開で求婚した女性リジーとまさかの意気投合。交際数分で結婚を決めてしまいます。そんなヤコブがリジーを語る「ストーリー・オブ・マイ・ワイフ」がこの映画の物語なのですが、、、
章立てに展開するこの物語は、ヤコブの目を通して見る妻リジーを「愛おしい妻」、「美しい妻」、「社交的な妻」、「天真爛漫な妻」、、と途中、途中に航海による一定期間の留守を挟みながら、妻に感じるもの、求めるもの、知らないこと、そして嫉妬や不安と、実は何も解っていない「マイ・ワイフ」に対する幻想こそがこの物語の肝であって、そしてオチとなる部分です。
船長として信頼と尊敬を受ける立場にあり、社会的な部分で「自尊心」があるからこそ、ある「疑い」について過剰に反応し、らしくない言動をとってしまうヤコブ。それもこれもリジーへの想いが彼を惑わせるわけですが、正直、同じ男性としては「解らなくもない」と同情もしちゃいます。ま、現代では真っ先に「如何なものか」と批判を受けて然るべきものですけど。。
169分と長めの映画で、さらには古典的な内容であり、作る人によっては100分以下にもなりそうな作品ですが、ヤコブ目線のリジーへの想いが滲み出るような「焦れる展開」はレア・セドゥだからこそ「画がもって」且つ「目が離せない」力があります。
で、結局、何が言いたいの?
出逢った瞬間に結婚を決めた夫婦の物語だが、そんな二人がうまく行くはずがないだろうと思って観ていると、果たしてそのとおりになる。
終始、夫の視点で語られるため、妻が、どんな人間で、何を考えているのかが分からず、その分、夫の疑心暗鬼に共感できるのだが、どこか釈然としないものも残る。最後に、妻の、あっと驚くような正体が明らかになるのかもと期待したが、それもない。
物語自体は、決してつまらない訳でなく、退屈もしないのだが、じっくりと時間をかけて描いている割には、分かりにくかったり、疑問に感じるところが多すぎる。
始めから現実離れした物語なので、何かの寓話なのかとも思ったが、確かに、川に落ちた夫を助けた医者の台詞や、最後の夫のモノローグには、人生訓のようなものが示唆されているものの、まったく府に落ちるところがないし、納得もできなかった。
もしかしたら、「船乗りは、まともな結婚ができない」ということを言いたかったのだろうか?
景色が綺麗だった
男の嫉妬怖いですね。
7年後の章が見応えありました。
子供が居たら、ちがってたのに。。。
子供は、かすがいといいますからね!
始めの10分遅れて見れなかったので
結婚したいきさつがあとから
知りました。
何のための結婚???
1920年、マルタ島のカフェで、船長のヤコブは友人に「店に最初に入ってきた女性と結婚する」といい、リジーという美しい女性に初対面にも関わらず結婚を申し込んだ。リジーは承諾し、その週末、野球拳のようなポーカーをしてヤコブとリジーは新婚初夜を迎えた。数ヶ月に1度しか会えないのだが、最初は幸せだったヤコブとリジーだったが、リジーの友人デダンが現れ、ヤコブは2人の仲を疑って嫉妬するようになり・・・てな話。
レア・セドゥーを美しいと思えば持つのだろうが、そう思えないと、169分はさすがに長い。
オランダ人、フランス人、ドイツ人が母国語でない英語で演技してるが、(ハンガリー語も有ったのかも)さすがヨーロッパ、2ヶ国語、3ヶ国語を話せるのは珍しくもないのだろう。
マルタ島は当時イギリス領だったのかな?
最後はそうなる?ってちょっと予想外。
結婚って何だろうね?
めっちゃ美人ふたりに愛されたヤコブ、うらやましい!
レア・セドゥーさん、美しいです。
ヤコブの歌声、よかったです。
夫婦の関係がよく描かれていました。
最初に入ってきた人にプロポーズって、レア・セドゥーさんだから最高ですね!
良い作品だとは思うけど眠たい
原作がありふれた話な気がするの。
恋多き女っぽい奥さんが、旦那さんのことが好きなのかどうなのか良く分からなくて旦那さんは翻弄されるけど、でもやっぱり奥さんは旦那さんの隣にいたときが一番輝いていたっていう。
それを丁寧に描いていって、映像も綺麗だし、「人間の心って一筋縄ではいかないですよね」っていう感情表現もいいし、全部を説明しない話の進め方もいいの。
でも眠い。
レア・セドゥー
脚本が冗長で下手くそなんだけど、撮影の美しさをはじめカンヌのコンペに残るだけのクオリティーはある。レア・セドゥーの魅力が独特で、この人を使いたい監督は多いだろうなと思う。自分だたったらアベンジャーズのスカーレット・ヨハンソンの立ち位置で、サノスに回し蹴りを食らわすレア・セドゥーが見たい。
息苦しい169分
"初めに出会った女"云々は大人の寓話として楽しく、その後のやりとりも現実にはあり得ないんだけど何とも洒落ている。要は、あの状況を受け入れ、あの会話を成立させるリンジーの奔放な性格と機智に富む知性と人間性を表している(リンジー、魅力的だよね)。お互いを知らずして結ばれ、そしてそこからホンモノの恋愛が始まるという設定。
結局、彼らの結婚生活はお互いを疑い(これはヤコブの方だね)、相手を理解せず(これは二人ともだな)に自分を理解してもらおうと足掻く。そんな繰り返し。ひとつのエピソードとして、外で食事をしたいとリンジーがヤコブにお金をせがむという下りがある。ヤコブは黙って渡せばいいのに、心のどこかでリンジーを疑っているからあんな態度になる。リンジーのお金のせがみ方は考えようによってはいたずらっぽくて可愛いのに、ヤコブはあんな情けない態度をとってしまう。でも情けないかな、僕にもよく分かるんだ、ヤコブの気持ち。リンジーがヤコブに浮気をけしかけるのもヤコブからすれば嬉しい訳がない(これって相手の愛を束縛と感じたときに言いたくなる台詞だよね)。なに考えてるんだこの女はというのが本音だろう(で、浮気しちゃうんだけど)。リンジーみたいな女は魅力的だけど(魅力的すぎて?)、妻としては難し過ぎる。
ずっと息苦しさを感じつつ(僕はヤコブになってたよ)の160分でした。お互いに求めながら、癒される存在にはなれなかったというのはパートナーとしては難しい。デダンなんて存在は大したもんじゃなかったと思うな。リンジーはヤコブと別れたときに気づいたのかもしれないけど。
予想よりも面白く、とても考えさせられた。
加えて映像の美しさも素晴らしかった。1930年くらいなのかな、時代設定は。ヨーロッパの中都市の街並み(マルタ、ブダペスト、ハンブルク)、ジャズと酒を楽しむ人々。リンジーの服装と髪型がいい。そして海と港の美しさ。
映画館がらがらだったのはもったいない。
恋愛をしている人、とくに難しい結婚生活をしている人、見たらいいんじゃないかあ。そういう人はあまり映画館に足を運ばないのかなあ。
極限の映像美
ため息が出るほど、レア・セドゥーが美しい。美しいのだけれど、更に美しく撮られている。
美しさ、マシマシなのである。
それと、ルイ・ガレルの存在感の素晴らしさ。台詞なし、顔のアップだけで、圧倒出来る俳優さんなんて、そうそう居ません。
お話は、不明瞭な部分が多々ありますが…男と女の鬩ぎ合いと申しますか、ある夫婦の紆余曲折を描いています。
16歳から海の男、船長のヤコブは知り合いのビーニに呼び出され、、少しいい店に出向きます。ビーニは胡散臭い野郎ですが、会話を楽しみます。船の料理人に妻を娶れと云われたのを思いだし、『最初に入ってきた女性と結婚する』と軽口を叩きます。金を貸すとビーニは直ぐに出て行きますが、帽子を目深に被った謎めいた女性が入ってきたので、軽口を実行してみます。なんと意気投合して本当に結婚することに。
その女性はリジー。待ち合わせていた彼氏を振って自分と結婚した事しか情報はありません。
最初はとても上手くいきます。初夜に野球拳ポーカーをしたりして、この辺りがピークかな?お土産に香水を買ってきたり…その後はリジーの友達と言葉が通じないこともあり、航海から戻る度に、妻に対する不信感が増します。私の解釈ではこの辺まではリジーは浮気していない。夫の気を引こうとして匂わせていただけだと思う。
でもお土産の香水を喜びもせず、香水を変えたの!と言った頃から怪しい。ヤコブには、処女を片っ端から奪えとか、焚き付けるし、少し心を病んでる感じ。ヤコブ自身もリジーとの関係を修復しようと躍起になるが、色々裏目に出る。挙げ句の果てには金が底をつき川に身を投げる。もちろん大の男が死にはしないが…リジーは寝ずの番で献身的に看病しこのまま上手くいくのかと思っていたら、リジーはデタンと石油の株券を持って駆け落ち…列車の中でヤコブに追い付かれ、完全に離別することになる。
ヤコブは6年後にリジーの死を知る。
フランスやハンガリーの景色は素晴らしく、男と女の求めるものの違いを描いているのは、よく解りますが、リジーの駆け落ちの理由や死因なとは明かされておらず、少し、モヤモヤが残りました。
【”偶然に出会い、愛し合った男女の微妙な心のすれ違い・・。”鑑賞側に中盤まで多様な見方を許容する構成と、ラストで男女の愛の真実を女性目線で描いたイルディコー・エニュディ監督の手腕に唸った作品。】
ー イルディコー・エニュディ監督は、前作(で、傑作)「心と体と」でも、コミュケーション不全の美しき女性と中年の男性がお互いに惹かれながらも、心が微妙に擦れ違う様を絶妙に描いていた。
今作も、私見ではあるが、扱っているテーマは近いと思う。ー
■船長として、長い間海の上で生活して来た独り身のヤコブ(ハイス・スナイパー)は、久しぶりに上陸した際に、知り合いであるコードーと喫茶店で”最初に店に入って来た女性と結婚する”と口にし、蠱惑的な美しさを湛えたリジー(レア・セドゥ)にプロポーズする。
リジーは微笑みながら、それを受け入れる。
◆感想
・イルディコー・エニュディ監督は、今作を7章立てにして、二人の関係性の変遷を描いている。
冒頭に”二人のヤコブと七つの教訓”と意味深なテロップが流れ、各章にも夫々に副題が付いている。
ー この物語を章立てにした事が、巧く効いている。
比較的長編の今作であるが、各章の副題を読むことでヤコブとリジーの関係性の変遷と物語りがどう展開して行くのかを期待させるからである。
更に言えば、第7章で描かれることが、この作品の本質を見事に示しているのである。-
・蠱惑的な美しさと謎を湛えた奔放なリジーと”誠実だが、信じやすい”ヤコブは、結婚当初は仲睦まじいが、リジーの友人で”作家”と称するデダン(ルイ・ガレル)の登場で、ヤコブの猜疑心が芽生える。
ー ”誠実だが、信じやすい”と言う言葉は後半、リジーがヤコブの人となりを語る際に出た言葉である。-
・第6章までは、観ている側も”リジーは、ヤコブが航海中に浮気をしているのではないか・・”と勘繰る。
苛つくヤコブだが、自らリジーに問い質さずに、探偵に調査を依頼する。
ー リジーが浮気をしているシーンは一切描かれないが、それを思わせるシーンは映される。
更に今作ではリジーの出生や家族など、一切描かれない。-
・ヤコブが自暴自棄になり川に飛び込んだ後、助け出され二日間寝たきりになった際には、リジーは(多分一睡もせずに)看病し、漸く目を開けたヤコブに青白い顔で微笑みかける。
ー これも私見であるが、リジーは浮気をしつつも、実は一番大切に思っているのはヤコブなのではないか、と思ったシーンである。-
・だが、その後リジーがデダンと駆け落ちし、追いかけたヤコブは列車内の個室でデダンを殴りつけ、リジーに屈辱的な手紙を書かせ、一方的に別れる。激しい言葉を彼女に浴びせながら・・。
ー ココのシーンは、唐突感があり、もう少し掘り下げて描いて欲しかった気がするなあ。-
・1920年代の、作り込んだ、衣装、意匠も今作の趣を高めていると思う。
■白眉のシーン
・"第七章 7年後" とテロップが流れ、ヤコブは町を歩くリジーを見る。驚いた彼は知人にその事実を述べるが、知人は”彼女は6年前に死んだよ・・。”と口にする。
そして、歩いていたリジーの姿は、雲散霧消していくのである。
<今作は、海しか知らなかった男が、蠱惑的な美しさと謎を湛えた奔放な女性と結婚し、”結婚生活は、船の操縦にように自らが全て仕切れる訳ではない”と言う事を身を持って学ぶ姿と、
その奔放な女性が、実は自分の事を一番愛していた事を、その女性を失ってから気付く姿を、女性の視点で描いた作品なのである。>
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