「息苦しい169分」ストーリー・オブ・マイ・ワイフ ゆみありさんの映画レビュー(感想・評価)
息苦しい169分
"初めに出会った女"云々は大人の寓話として楽しく、その後のやりとりも現実にはあり得ないんだけど何とも洒落ている。要は、あの状況を受け入れ、あの会話を成立させるリンジーの奔放な性格と機智に富む知性と人間性を表している(リンジー、魅力的だよね)。お互いを知らずして結ばれ、そしてそこからホンモノの恋愛が始まるという設定。
結局、彼らの結婚生活はお互いを疑い(これはヤコブの方だね)、相手を理解せず(これは二人ともだな)に自分を理解してもらおうと足掻く。そんな繰り返し。ひとつのエピソードとして、外で食事をしたいとリンジーがヤコブにお金をせがむという下りがある。ヤコブは黙って渡せばいいのに、心のどこかでリンジーを疑っているからあんな態度になる。リンジーのお金のせがみ方は考えようによってはいたずらっぽくて可愛いのに、ヤコブはあんな情けない態度をとってしまう。でも情けないかな、僕にもよく分かるんだ、ヤコブの気持ち。リンジーがヤコブに浮気をけしかけるのもヤコブからすれば嬉しい訳がない(これって相手の愛を束縛と感じたときに言いたくなる台詞だよね)。なに考えてるんだこの女はというのが本音だろう(で、浮気しちゃうんだけど)。リンジーみたいな女は魅力的だけど(魅力的すぎて?)、妻としては難し過ぎる。
ずっと息苦しさを感じつつ(僕はヤコブになってたよ)の160分でした。お互いに求めながら、癒される存在にはなれなかったというのはパートナーとしては難しい。デダンなんて存在は大したもんじゃなかったと思うな。リンジーはヤコブと別れたときに気づいたのかもしれないけど。
予想よりも面白く、とても考えさせられた。
加えて映像の美しさも素晴らしかった。1930年くらいなのかな、時代設定は。ヨーロッパの中都市の街並み(マルタ、ブダペスト、ハンブルク)、ジャズと酒を楽しむ人々。リンジーの服装と髪型がいい。そして海と港の美しさ。
映画館がらがらだったのはもったいない。
恋愛をしている人、とくに難しい結婚生活をしている人、見たらいいんじゃないかあ。そういう人はあまり映画館に足を運ばないのかなあ。
今晩は
初めましてでしょうか。今作はやや難解な部分もありつつも、とても面白く鑑賞しました。
私は”とくに難しい結婚生活をしている人”ではありませんが、男としてはリンジーが自身を本当に愛しているか、疑念を抱いてしまったヤコブの姿を女性の目線から描いた映画だと思いました。
当時の、衣装や意匠も作品に趣を齎してくれた作品だと思いましたね。
では。