「【”偶然に出会い、愛し合った男女の微妙な心のすれ違い・・。”鑑賞側に中盤まで多様な見方を許容する構成と、ラストで男女の愛の真実を女性目線で描いたイルディコー・エニュディ監督の手腕に唸った作品。】」ストーリー・オブ・マイ・ワイフ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”偶然に出会い、愛し合った男女の微妙な心のすれ違い・・。”鑑賞側に中盤まで多様な見方を許容する構成と、ラストで男女の愛の真実を女性目線で描いたイルディコー・エニュディ監督の手腕に唸った作品。】
ー イルディコー・エニュディ監督は、前作(で、傑作)「心と体と」でも、コミュケーション不全の美しき女性と中年の男性がお互いに惹かれながらも、心が微妙に擦れ違う様を絶妙に描いていた。
今作も、私見ではあるが、扱っているテーマは近いと思う。ー
■船長として、長い間海の上で生活して来た独り身のヤコブ(ハイス・スナイパー)は、久しぶりに上陸した際に、知り合いであるコードーと喫茶店で”最初に店に入って来た女性と結婚する”と口にし、蠱惑的な美しさを湛えたリジー(レア・セドゥ)にプロポーズする。
リジーは微笑みながら、それを受け入れる。
◆感想
・イルディコー・エニュディ監督は、今作を7章立てにして、二人の関係性の変遷を描いている。
冒頭に”二人のヤコブと七つの教訓”と意味深なテロップが流れ、各章にも夫々に副題が付いている。
ー この物語を章立てにした事が、巧く効いている。
比較的長編の今作であるが、各章の副題を読むことでヤコブとリジーの関係性の変遷と物語りがどう展開して行くのかを期待させるからである。
更に言えば、第7章で描かれることが、この作品の本質を見事に示しているのである。-
・蠱惑的な美しさと謎を湛えた奔放なリジーと”誠実だが、信じやすい”ヤコブは、結婚当初は仲睦まじいが、リジーの友人で”作家”と称するデダン(ルイ・ガレル)の登場で、ヤコブの猜疑心が芽生える。
ー ”誠実だが、信じやすい”と言う言葉は後半、リジーがヤコブの人となりを語る際に出た言葉である。-
・第6章までは、観ている側も”リジーは、ヤコブが航海中に浮気をしているのではないか・・”と勘繰る。
苛つくヤコブだが、自らリジーに問い質さずに、探偵に調査を依頼する。
ー リジーが浮気をしているシーンは一切描かれないが、それを思わせるシーンは映される。
更に今作ではリジーの出生や家族など、一切描かれない。-
・ヤコブが自暴自棄になり川に飛び込んだ後、助け出され二日間寝たきりになった際には、リジーは(多分一睡もせずに)看病し、漸く目を開けたヤコブに青白い顔で微笑みかける。
ー これも私見であるが、リジーは浮気をしつつも、実は一番大切に思っているのはヤコブなのではないか、と思ったシーンである。-
・だが、その後リジーがデダンと駆け落ちし、追いかけたヤコブは列車内の個室でデダンを殴りつけ、リジーに屈辱的な手紙を書かせ、一方的に別れる。激しい言葉を彼女に浴びせながら・・。
ー ココのシーンは、唐突感があり、もう少し掘り下げて描いて欲しかった気がするなあ。-
・1920年代の、作り込んだ、衣装、意匠も今作の趣を高めていると思う。
■白眉のシーン
・"第七章 7年後" とテロップが流れ、ヤコブは町を歩くリジーを見る。驚いた彼は知人にその事実を述べるが、知人は”彼女は6年前に死んだよ・・。”と口にする。
そして、歩いていたリジーの姿は、雲散霧消していくのである。
<今作は、海しか知らなかった男が、蠱惑的な美しさと謎を湛えた奔放な女性と結婚し、”結婚生活は、船の操縦にように自らが全て仕切れる訳ではない”と言う事を身を持って学ぶ姿と、
その奔放な女性が、実は自分の事を一番愛していた事を、その女性を失ってから気付く姿を、女性の視点で描いた作品なのである。>
こんばんわ、こちらこそありがとうございますm(__)m大須は人が多い(映画館じゃないですょ)けど、楽しめます。旨いタコス屋さんとワイン・バーがあります。もちろん映画館も新しいので(^-^)特に椅子が気に入っております。今日は愛知国際芸術祭&名演小劇場でした。芸術祭は一宮市も開催地になっていて、スケート場の展示がとても素晴らしかったです。『チタン』を彷彿させる感覚。お時間があれば、是非\(^-^)/
コメントありがとうございます。映画は昨夜観たんだけどまだ考えてます。列車の中で屈辱的な文書を書かせられたときのリンジーの表情が頭にこびりついている。あの時何考えてたのかな。僕はヤコブ目線で観てたから、あの微妙な表情とそれから一年後の死を重ね合わせて、彼女にはヤコブが必要だったんだと思っている。男ってそういうもんだよね。昔付き合ってた人をなかなか忘れられないし、バカなんだけど今でも自分を必要としているかもなんて心のどこかで思ってる。少なくとも僕はそういう人間です(笑)