「なかなかの良作」梅切らぬバカ かずぼんさんの映画レビュー(感想・評価)
なかなかの良作
障碍者をテーマに扱った映画やドラマというのはどうしても斜に構えてみてしまうもの。
ましてやお笑い芸人が演じるとなれば尚更のことではあるが、結論から言えばなかなか面白かった。
タイトルである「梅切らぬバカ」というのはことわざからの引用で「桜伐る馬鹿梅伐らぬ馬鹿」から来ている。
これは同じ剪定でも桜は菌に弱いためむやみに切ってはならず、梅は良い実をつけるためにも切ってやらねばならぬという事からの教えで、「それぞれの個性に応じた適切な処置をすることが大切だ」という意味合いがある。
このことわざを知らないと、梅切らぬ馬鹿=加賀まりこ一家と感じてしまい、障碍者を揶揄しているようにとらわれかねないのはちょっと残念である。
このタイトルは前述のとおり、個性(障碍)にあった対応が必要だという教訓の意味である。
内容については障碍者の子供を持つ親や施設の苦悩、理解を得られないご近所さんとのトラブルなど、ありがちであるが決して無視できない事柄を丁寧に書いており好感を持てた。
約1時間半という短めの映画であるため、展開が非常に早いという部分もあるが、これらを長々と見せられてもそれはそれでげんなりしてしまうだろうとも思え、難しい問題ながらも笑いどころもちゃんとあり、個人的にはよくまとめられているなとすら思う。
本作を作る上で、監督は知人を含めかなりの取材を繰り返したそうだ。
障碍者は何をしでかすか解らない…という不安も解る。が、すべての障碍者がそうではない。
障碍の度合いも違えば特性も違う。周りが理解さえすれば普通の生活を送れる人も多い。
やみくもに怖がらず、理解しようという歩み寄りから始めた方が結果的に良い方向に向かうという事を言いたかったのかなと思います。
最初に書きましたが、ドランクドラゴンの塚地さんや林家正蔵さんなど、お笑い界からの出演があって、敬遠してしまう人も居るかと思いますが、なかなか良い作品なので見て欲しいですね。