「東京と生きる13人の群像劇、容赦がなくて美しい映画」スパゲティコード・ラブ たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
東京と生きる13人の群像劇、容赦がなくて美しい映画
どことなく「東京」がいつだって憧れだった自分にとって、心の奥まで深く刺さる傑作。「好きと執着は別物」この言葉にこれからも救われるのだろう。監督のコメントも交えながら記していく。
13人が主人公であるが、「東京」が14人目の主人公であるように、大きなうねりと混沌とした感情がそこでうずく。暴力的でありながら、夢もきっと叶えてくれそうなユートピアにも見えてしまう。そんな街で、ため息にもならない様な息苦しさを抱えた若者たちがランデヴーしていく。その過程はあまりにもリアルで容赦がない。就活中の私にとっては、毒を浴びるような感覚だった。
それでもこの作品が指す光は、抱えたリアルを見事なまでに精算している。監督自身も好きで大切にしたというモノローグが、彼らの今をありありとあぶり出している。そして、そこから開かれる狂騒と混じり合っていく彼らの呼吸に鳥肌が立つ。脚本の時点で出来上がっていたという巧みな編集は、CMやMV等で磨かれた幻想的かつ残酷な映像と共に混ざり、その美しさに息を呑む。
倉悠貴演じる羽田以外、当初はキャラクター造形も決まっていなかったという。変更しながら、都会でもがく若者を多岐に置いたことで、見事なまでに強い共感性と多様化する社会の根底に眠る感情を想起させる。その中での異彩、満島ひかりはやはり美しい。エンドロールの(♡)からも、特別な存在だと感じさせる。
どのキャラクターも人間臭さがあってたまらず、東京では1人の単位も生きていないような物寂しさを感じさせる。ここまで清々しく、救われるとは。好みは分かれるだろうが、都会指数を抱いた人ならきっと他人事ではないはずだ。
自分にとっての「好き」は「執着」するものだと信じて疑わなかった。就活のたびに押し戻されそうになる感情を、大粒の涙とともに洗い流してくれた。今年のベストの中の1本。公開されたらもう一度観たい。