「結局強いものが生き残ると言いたいだけの思考の単純さは清々しくも愚かである」機動戦士ガンダムSEED FREEDOM eigazukiさんの映画レビュー(感想・評価)
結局強いものが生き残ると言いたいだけの思考の単純さは清々しくも愚かである
主人公とヒロインが愛の力で敵の軍隊をやっつける勧善懲悪ならぬ勧愛懲悪ストーリー。ブルーコスモスやファウンデーションなどの過激な思想の軍事組織をガンダムが愛のパワーで蹴散らす。作中から感じ取られる「愛が勝つ」というメッセージは単純でわかりやすい。しかし愛とはそもそもどういうものなのであろうか。作中では主人公キラとラクスがイチャイチャしながらガンダムに乗り謎の光線を撃ち勝手に敵が消えてくれるのが愛である。愛し合う二人には他人の苦しみなどは関係ない。究極の自己中心的思想が愛であると私は思った。人対人の勝負事や宗教などの迷いのない単純さは確かに他よりも生存力的に一時的に強いですが長い年月で見た場合は弱い者の多様性が勝つのが真理であり定説である。弱者がいかに知恵を使い生存するかということにクローズアップした過去のガンダム作品のほうが私には合っている。(たとえば初代ガンダムのニュータイプという超能力設定は素人の子供が軍人の大人に勝つのではなくて戦争を生き残るため製作者が与えた知恵だった。敵に「勝つ」のではなく「生き残る」ことに主眼が置かれている。)
追記:
「勝つ」ということをもてはやす最近の日本は単純で愚かだと思った。勝って相手を打ち負かして後の事は考えないからだ。終戦後大復興を成し遂げた日本人が偉かったのは「勝つ」のではなく「生き残る」に意識が変化したからだと思う。1979年~1982年のアニメ作品「機動戦士ガンダム」には「生き残る」ことに注力し戦後復興を成し遂げた偉大な戦後の日本人のまさに黄金の意識が感じ取れる。それに比べこの2025年の「戦士ガンダムSEED FREEDOM」の「勝つ」ことにこだわる単純さへの変わりようには日本人の意識が変化してしまったと私には感じられる。現在の日本はかつての繁栄を取り返そうとして勝とうとしているが戦後日本が「生き残る」ことに注力したことを忘れている。
この作品のラストは現実的にして敵も味方も生き残るラストがよかった。