「自由の為に」機動戦士ガンダムSEED FREEDOM 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
自由の為に
令和になった今も新作が作り続けられるガンダムシリーズ。
2000年代に於ける人気の決定付けと新たなファンと世代の獲得に成功したのが、2002年~2003年放送の『機動戦士ガンダムSEED』と2004年~2005年放送の続編『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』と言えるだろう。
旧シリーズにオマージュしつつ、また新たなデザインのモビルスーツや迫力のバトルのみならず、まるで少女漫画のようなキラキラ瞳の美形キャラが織り成す人間ドラマと恋愛模様、シリアスで骨太なストーリーとテーマ…。リアルタイム放送ではないが、レンタルで見、宇宙世紀以外のシリーズでドハマりした一つ。
OPやEDを彩った曲も良かった。西川貴教が歌う『INVOKE インヴォーク』が一番人気だろうが、個人的には梶浦サウンド炸裂の『あんなに一緒だったのに』がお気に入り。
放送終了して約20年…。20年も経って、まさか新作劇場版が作られるとは…!
『00』や『水星の魔女』や『閃光のハサウェイ』に続く新作じゃなくて…?
公開するや否や、興行収入48・4億円。劇場版ガンダム最大のヒットに。衰えぬ『SEED』人気に驚いた。
かく言う私も観たかった。が、いつもながら地元の映画館では…。まだロングランヒットの中、Netflixでスピード配信!
ありがたや。
とは言え、最後に見てから10年以上経つ。TVシリーズを再見する時間はさすがに無いので、スペシャルエディション版くらいせめて見てから見ようと思ったのだが…、早く見たかったので見ちゃった。
細かい設定やストーリーとか忘れてる部分もあるけど、大丈夫かな…?
やっぱり昔、見てただけの事はあった。しっかり覚えていた点もあり、見ている内に思い出したり、忘れていた点はWikipediaで事前調べたりして、置いてきぼり状態にはならず。
久々の『SEED』世界へ、行きます!
まず、基本設定。
C.E.(コズミック・イラ)70年。従来の人類“ナチュラル”と遺伝子操作された新人類“コーディネイター”の対立が深まる中、“血のバレンタイン事件”を発端に戦争へ。
コロニーで平穏に暮らしていたコーディネイターの少年キラ・ヤマトは、ナチュラルの“地球連合軍”とコーディネイターの“ザフト軍”の争いに巻き込まれ、連合軍のモビルスーツに搭乗。戦火の中で、かつての親友でザフト軍に属するアスラン・ザラと再会し…。
戦争を知らぬ少年少女たちが戦争に巻き込まれ、モビルスーツに搭乗…はファーストを彷彿。と言うか、完全オマージュ。
対立する勢力で再会するかつての親友同士。その苦悩、葛藤。
ガンダムシリーズで最もと言っていいくらい、あっちでこっちで“恋愛事件”も勃発。見た人それぞれに推しキャラがいる。ちなみに私は美人艦長のマリューさん。
何が正しいのか、何の為に闘うのか。模索しながら、傷付きながらも、闘い続ける。各々の正義と平和と自由と愛の為に。
ガンダムシリーズの一番の人気はモビルスーツ(とガンプラ)だろうが、私はキャラやストーリーが好き。
SFアニメでありながら、戦争絶えぬ世界情勢を反映。リアルタイム放送時はイラク戦争だったろうが、今は…言うまでもない。
戦争に終わりはないのか…? 人々は対立し、憎しみ続けるのか…?
新たな争いがまた一つ…。
先の大戦で、プラント最高評議会議長デュランダルが掲げた“デスティニープラン”。全人類を遺伝子操作で平等化し、適性の職や生き方を与える。
そこに不平等や争いは無いが、人個人個人の自由意思もない。
それに抗ったキラたち。
闘い続ける事、そして自由を選んだ。
C.E.75年、反思想集団“ブルーコスモス”によるテロ活動が続く。
ラクス・クラインを初代総裁とする世界平和監視機構“コンパス”がその鎮静化に当たっていた。
そんな時、ユーラシア連邦から独立した“ファウンデーション王国”が共同作戦の提案。
コンパスはそれを受け入れたが…。
まだ子供の女王アウラ。若き宰相のオルフェ。親衛隊“ブラックナイツ”。只ならぬ雰囲気漂う…。
ラクスとオルフェは手が触れた瞬間、何かを感じ合う。キラの胸中は穏やかではないが、それを口に出す事は出来ず…。
コンパスとブラックナイツ合同によるブルーコスモス残党討伐。
その作戦中、キラは突如精神侵食に襲われ、協定違反の領域外を侵してしまう。
熱核ミサイルが発射され、ファウンデーション王国もコンパスも甚大な被害を。
ファウンデーションは報復を世界に宣言する…。
全てファウンデーションの陰謀。
真の目的は、デスティニープランの復活。コーディネイターを超える新人類“アコード”による全人類の支配。
対する勢力には、恐ろしい兵器“レクイエム”で殲滅。
熱核ミサイル着弾直前、ラクスはオルフェらと宇宙へ逃れたが、実際は囚われの身に。
ラクスを手中にするのも目的であった。アウラ女王の下、オルフェとラクスが新人類の“アダムとイヴ”に。その為に“創られた”。
キラはラクスが裏切ったと。
オルフェらの脅威、世界の命運、愛の行方…。
反逆勢力に貶められたコンパス。キラたちはどう対するのか…?
大ヒットし、待ち望んでいたファンからは歓喜と共に迎えられたが、人気作の宿命。賛否の声も目立つ。
世界観の崩壊、キャラに違和感、こんなの『SEED』じゃない…。確かにあの“ハレンチ妄想”にはドン引いたし、各キャラもこんな性格だったっけ…?
深い愛で結ばれているキラとラクス。イケメン宰相の割り込みで仲拗れるかな…?
しかし、それぞれ掲げる正義、単純に白黒付けられず。迫力のモビルスーツバトル、お馴染みのキャラたちの登場、作品を盛り上げる楽曲、友情、絆…。
愛も高らかに謳い上げる。キラとラクスの不変の愛はベタだけど、ラクスが終盤で言ったキラへの愛はストレートに響く。他のカップル、アスランとカガリ、マリューとムウらはほとんど描かれなかったのは残念だが…。
SEED節は健在。昔、夢中になって見てた興奮を思い出した。
掲げられた人類の未来。
全人類を遺伝子操作で平等化する事によって、格差も差別も偏見もない。争いもない。
未来永劫、人類は平等に平和に生きていけるかもしれない。
だがそこに、自由はあるのか…?
個人の自由。生きる自由。選択の自由。愛の自由。
その自由を求めて、人々は争い合う。憎しみ合う。
それは人類が繁栄し続ける限り、無くなる事は無いだろう。
人々が対立し、憎しみ合い、対立し合い、その果てに辿り着ける自由と平和。
その為に苦しんだ。多くの血が流された。それは一生癒えない。
その痛み、苦しみを身を持って覚えているからこそ、遂に掴んだ自由と平和が尊い。掲げられた平等と平和より。
先の大戦時のデスティニープラン。新たなデスティニープラン。
理想的ではあるが、恐ろしい事でもある。人が自由を失い、選別される。
やってる事はナチスと変わらない。歴史上の大義名分の戦争理由の繰り返し。
人は愚かにも同じ過ちを繰り返す。
時にそれが正しいとされ、抗う事が咎められる。
それでも人は抗い続けるのだ。
未来の為に。平和の為に。愛の為に。自由の為に。