「知って、自らを振り返ろう」グレート・インディアン・キッチン CBさんの映画レビュー(感想・評価)
知って、自らを振り返ろう
インドの結婚した女性主人公が、名家である夫の家で、ひたすら食事を作り、掃除をし続け、伝統に縛られまくる話。
いつものインド映画を観るノリで観ましたが、これは極めて真面目な映画でした。フィクションだけれど、ドキュメンタリーかのようなテイスト。
主人公は、ひたすらキッチンで料理。その出来上がった料理はとても綺麗なのだが、夫と義父が食べ終わった食卓は、これでもかと散らかっている。
タイトル通り、グレートな?インドの台所だ。
お義父さんも常に微笑んでいる優しそうな人なのだが、主人公が「働きたい」と言えば即座に「我が家には、(妻が働くのは)合わないな。私の妻はずっと家にいる。だから我が家は幸せなんだ」と、優しそうに答える。
衣服を洗濯機で洗うと「服が痛むので、自分の服は手で洗ってね」と微笑む。きっと、ごく普通の家なのだろう。
主人公が頼りにしたい大学で人権について教えている夫ですら、食卓の食べ散らかしを指摘されると怒りまくる。食べカスを皿に置くかテーブルに置くかだけの違いなのに。店で食べる時は皿に置くのに。
俺たちはこれを「遅れてるなあ」と笑うのでなく、「俺たちもこうだったんだな。そして、まだまだ似たようなことがあるんだろうな」と我が身を振り返る機会としたいものだ。
冒頭に映る「科学に感謝」というメッセージは、「生理は忌むべきもの」という根強い考え方があって生理期間を、不潔な環境で過ごさなければいけなかったインドで、科学的に意味がないどころか危険だよ、と周知されるようになって、女性達がようやくそこから脱出できつつあるからなのだろう。「パッドマン」でも同じ課題が語られていたが、本当に由々しき問題だよな。
おまけ
この映画を観ると、人は、なぜ強い言葉で、頑なな姿勢で言う時があるのかがわかる気がする。それは、言おうとしている言葉に理屈がないからだ。過去にやってきたことが正しいのだと考えもせずに言う時、人はそうなるのではないか。気をつけよっと。