「新たな価値観の存在を高らかに」グレート・インディアン・キッチン バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)
新たな価値観の存在を高らかに
いやー、よく作りましたね。本国では上映できたのですよねー?きっと。もしそうなら、インドの懐の深さを感じます。カーストの国、信教心が強い国というイメージありますから、アジアの某大国なら速攻上映中止になるんじゃないでしょうかね?
けど本作は、「女性の自由!自由!自由!」って叫びではなく、あくまで「一意見」という仕上がりの作品ですから上映できたのかなぁって思います。新たな価値観の女性を否定しないで欲しい、認めてほ
しいという強いメッセージはありますが、旧来の価値観を否定しているわけではないからです。旧来の価値観を求めている女性たちも多くいるという描写も十分ありますからね。ですから告げ口映画でも価値観反対でもなく、あくまで新たに芽生えつつある(すでにあったのかな?)新たな価値観への賛歌(応援歌かな?)であり、今のインドを描いた作品だと思います。
きっと作り手は親族全ての女性の毎日を見ていて大いなる違和感を感じていたんでしょうね。そしてその違和感の全てがキッチンに集約していると。そこは女性達の仕事場であり唯一自分を開ける場所であるから。そこにある女性の表情が現実で本当なんだと。毎日かつ何世代も繰り返し続いてきたルーティーンが生んできた心のリアル。
料理のレシピ動画みたいなんですが、それの積み重ね、繰り返しで迫ってくる心情。「食」から始まる生活の全て。不思議なんですが、映像の積み重ねと男性達とのやり取りを見せているだけなんですが、徐々に感じる違和感、なんだったら男性に対して覚える嫌悪。本当にルーティーン描写が秀逸。リズムよく、そしてだんだん重荷になってくる、不条理感があふれてくるんですよねー。うまいなぁ。うまい、すごーーーくうまい!見事としか言いようがないです。でも、きっと作り手が見てきた風景を切り取っているだけなんだろうなぁ。でも伝わってくる・・・。素晴らしい。
インド映画の定番ダンスシーンはもちろんありますよ。こんなにメッセージ色が強いダンス見たことなかったなぁ、インド映画で。伝統の衣装(ですよねー)を身に纏った女性たちが呪縛からの解放と自由の歌に乗せて舞う。新しいインドへの賛歌のダンス・・・かな?
でも、忘れちゃいけないのは、それを望まない女性も沢山いるはずってこと。幸せの形は人の数だけある。これが、女性の幸せなんだって決めちゃうことは余計なお世話。価値観の新旧に関わらず。その点については万国共通かな?インドだからセンセーショナルなだけで。普遍のテーマかな?
是非是非多くの方々に見ていただきたいです。パートナーと生活されていらっしゃる方々に。