「コロナ禍がもたらした唯一の僥倖」パンケーキを毒見する Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
コロナ禍がもたらした唯一の僥倖
菅という政治家については、官房長官時代の記者会見でのひどい受け答え以外は知らなかった。
だが首相になって、「ふるさと納税」や「横浜カジノ」推進の主要人物と知って、ろくでもないという印象をもった。
本作で分かった点は、
・肝のすわった“ばくち打ち”であること。(かなりの行動が、これで説明できるのではないか。)
・そういう個性派が、本来は保守“傍流”であった安倍晋三という“勝ち馬”に乗ったゆえに、保守“本流”を一気に飛び越えて、分不相応の地位を手にしたこと。
・官房長官時代の権力の源泉が「機密費」であるのは、間違いないであろうこと。
・No.1になれない、No.2クラスの官僚を引き上げて、絶対に裏切らない“飼い犬”にしたこと。
・人事を握って支配をするが、本当の意味では、多くの官僚に恐れられていないらしいこと。(政権の混迷が、イエスマンと癒着企業だけを侍らせているがゆえに、本当に有益な情報もアドバイスも得られていないためであろうことは想像できる。)
ドキュメンタリーとしては、肩の力を抜いた淡々としたリズムで分かりやすく語っており、昨今の状況を鑑みれば、この内容で必要にして十分だと思う。
アニメも「数打ちゃ当たる」で、的を得ているものもいくつか見られた。「政治とカリカチュア」は、数百年来の伝統である。
ただ、インタビューに出た政治家が、軒並み好意的に描かれていたことが気になる。「こんな政治家を持ち上げるなよ」と思ったのもいた。
コロナ禍がもたらした唯一の“僥倖”は、安部-菅ラインによるメディア支配でも抑えられないくらい、国民の見る目が厳しくなったことだろう。
いや、正確には、今までなんとなく他人事だった政治が、いよいよ国民一人一人の「尻に火が付いてきた」ということかもしれない。
「パンケーキ」で懐柔される、テレビや大手紙のような大手メディアは、もはや害毒でしかない。
もしコロナ禍なかりせば、こんな映画も上映できず、「文春」や「赤旗」のような傍流メディアだけが告発する状況が続いていたと思われる。