「ドキュメンタリーとしての構成が面白い」ジャズ・ロフト sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)
ドキュメンタリーとしての構成が面白い
ニューヨーク6番街のとあるロフトに居を構えた報道写真家のユージン・スミスの生涯について掘り下げつつ、同時に、そのロフトに集ったミュージシャンたちによってジャズの新たな潮流が生み出されていった様子を、彼が残した膨大な記録を元に、劇中劇のように描き出す2本柱の構成が面白い。
ユージン・スミスの被写体への迫り方、撮影したフィルムの現像時のテクニックと試行錯誤の様子など、表現者としての真摯さに敬意を払いつつ、かなり具体的に細かな点まで突っ込んで描かれているところも感動した。
また、ロフトに集ったセロニアス・モンクをはじめとするジャズミュージシャンたちが、コンサートに向けてリハーサルを重ねていくパートは、ある意味、とってもスリリングで、胸が躍った。
ユージンが、自分の周囲の日常を大量の録音と撮影で記録し続けていたのは、彼の報道写真家気質のなせる技だったのだろうか。
その素材の質の高さを生かして、関わった人々へのインタビューと、冒頭に述べたような2本柱の構成で、何かが生まれ出る瞬間の普遍性と、時代の熱量とをものの見事に描き出した監督の力量にも敬意を表したい。
個人的には、スティーブ・ライヒが出てきて胸熱だった。彼の生み出したミニマルミュージックには、このロフトでの経験がどんな風に影響していたのかなと想像するのもワクワクした。
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