「母親も主役」フェアプレー Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
母親も主役
チェコスロバキアの200m走の女子選手、アンナの物語である。
状況設定は、ドーピングを扱った作品としてお決まりものだ。
有望な選手に対し、勝つための“最後のワンステップ”として、協会やコーチから禁止薬物を処方される。
しかし、アンナは生理が止まり、身体に異変がおきた時点で、薬物を拒否するようになるのだが・・・。
ただ、それだけでは単純すぎて映画にならないということか、アンナの母親がダブル主役のような形でストーリーに関わる。
アンナの母親は、かつて有望なテニス選手であったが、おそらくは反体制活動に関わり粛正され、今は掃除婦としてアンナを育てている。
一方、アンナの父親は西側に亡命しており、長く音信不通だ。
アンナの母親のキャラクター設定は、複雑でトリッキーだ。
途中からは、母親の方が主役と言って良い。
政治的弾圧を受け、現在も反体制活動に関わっているにもかかわらず、ドーピングに関しては、娘の反対を押し切ってまで強行し、体制に手を貸すのである。
「娘には成功して欲しい」、「西側へ行って欲しい」という思いがあるにせよ、実にねじれた話である。
ラストは、意外な展開を見せる。
共産圏の国の選手であるアンナの目指しているのは、「ロス五輪」なのだ・・・。
ドーピングを扱った作品としては、ひねった特徴のある内容であった。
<EUフィルムデーズ(@国立映画アーカイブ)にて鑑賞>
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