「世の中で一番強いのは妊婦である。」モンタナの目撃者 カツベン二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
世の中で一番強いのは妊婦である。
男勝りだが心にトラウマを抱えている女性森林消防隊員が重大な汚職事件の証拠を握る少年を暗殺者から守るという話。
山火事で同僚や3人の少年を助けることが出来なかったために罪の意識を持ち続け、半ば自暴自棄になっているところにこの少年に出会い、贖罪の気持ちもあり、何とか力になろうとする。
証人となる少年を助ける強い女性という設定では「依頼人」のスーザン・サランドンや「グロリア」のジーナ・ローランズあたりを思い出すが、残念ながらいずれにも中途半端感が否めず遠く及ばずであった。
殺し屋達がことごとく主要人物にトドメを刺さすことをせず、数ある写真から父子が逃げた場所を簡単に特定できたり、山火事が1日で鎮火したり、川を下り町に出るはずが結局監視塔の周辺をウロウロしていただけだったことなども理由かもしれない。
風向きをを読み間違えた反省から最後は気象状況を読みながら何とか町まで逃げ切るのではと勝手に深読みしたが、そこについてもなんとも中途半端な回収が見られた程度であった。
山火事含め全ての設定がストーリー展開上活かされていないことは本当に残念に思った。
監督のテイラー・シェリダンは「ボーダーライン」でもエミリー・ブラントを起用し、強い女性と強烈な緊張感を演出した鬼才だが本作では期待に届くところまでには至らなかった。
主役のアンジェリーナ・ジョリーは相変わらず美しくしっかりと体型を維持しておりプロ意識は感じるが、森林消防隊員としては何とも線が細く、銃を持った殺し屋とピッケル一つで格闘するシーンでは流石にリアリティ不足を感じた。
うっすらと母性を感じながら少年を守るために戦う主人公と妊娠していながらも旦那を助けるために果敢に戦おうとする黒人女性は共に実際には母親未満ではあるが、女性の本能として子供を守ろうと命懸けになるところが全編通し観入ってしまう最も応援したくなるシーンだった。
原作は未読だが、実は映画としてこれこそが隠れたテーマであり、母親必見の映画だと思う。