「深みのある余韻が残った」モンタナの目撃者 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
深みのある余韻が残った
主人公ハンナを演じたアンジェリーナ・ジョリーは熱のこもった怪演であったが、ハンナとコナー少年のシーンとジャックとアリソンの保安官夫婦のシーンとで注意が分散してしまって、ハラハラ感、ドキドキ感があまり盛り上がらなかった。
ただアメリカ映画には珍しく、家族第一主義でないところや必ずしもハッピーエンドではないところは悪くない。それに加えて、政権中枢にいると思われる強大な敵の存在を匂わせるところもいい。いずれハンナの敵になるであろうことを予感させて、序盤はかなり期待させる内容だった。
コナー少年の父親は勇敢な会計士であり、依頼主から受け取った国家機密に等しい情報を命懸けで守ろうとする。1993年のアメリカ映画「デーヴ」では、民間の会計士がアメリカの財政を精査したら無駄な予算がごっそり出てきたという場面があったが、この作品では無駄な予算どころか、ヤバい予算を発見してしまった訳だ。
父親は自分に危険が迫っていることを察知して、情報をコナーに託すのだが、お前が信じられる人に渡せというのは少年にとってはかなりの無理難題である。目の前で父親を惨殺されたコナーがハンナに遭遇したのは、それぞれにとって幸であったのか不幸であったのか。心に大きな傷を抱えたふたりが互いの傷を舐め合う前に、危険はすぐそこに迫ってくる。
そこまでの展開はよかったのだが、それから先が冒頭に述べた通り、ちょっとダレる。サスペンスとしてのインパクトに欠けているのが恨みだが、社会派のドラマ、ヒューマンドラマとしては優れていると思う。
大団円。少年がハンナに、こういう不味いものを食べているから痩せているんだねと言ったのに対して、ハンナは私は引き締まってるだけよという意味のleanという単語を使っていた。それは強靭な肉体を維持し続ける消防士としてのハンナの矜持である。それを話したことが少年にとって何か意味を持つのかどうか。コナー少年の未来について含みをもたせたラストシーンには、深みのある余韻が残った。
kossyさん、コメントありがとうございます。
痩せているという意味の英単語はたくさんあって、ネイティブの方々は自由自在に使っていますね。コナー少年はthinと言っていたかと思います。
アンジーが台詞を追加したと言われれば、その通りに違いないという気がしてきました。流石の洞察力ですね。
leanの意味は傾くだけだと思っていました・・・反省。
アンジーも大病を乗り越えただけあって、skinnyと言われるのがイヤだったのか、アンジー本人が台詞を追加したとしか思えませんでした・・・