「こんな「教師」が、いたのだなぁ。」かば BRUSHYMANさんの映画レビュー(感想・評価)
こんな「教師」が、いたのだなぁ。
『かば』。何かと思うでしょう?……「蒲先生」。人名なんですな。
実在した大阪・西成の中学教師を軸にした「実話ベース」の群像劇。これが、実にいい。結論から言えば、快作です。
ドキュメンタリーかというような、1985年の、リアル。変な言い方ですが、これはスターなり役者名で釣る作品でないも、逆にプラスに作用してるかも。
あらゆるベタベタなドラマ的「説教臭さ」や「泣かせテク」を排除しているのが、本当に好感。ましてや、勘違いされがちなんでしょうけど、同和教育の映画では全くない。かといって、えげつない暴力や死を描くというのでもなければ、逆に淡々としすぎてるのでもない。程よい「映画濃度」でもって描かれる、教師と複雑なバックボーンの生徒が向き合う日々。
「この学校にはなぁ、部落か在日か沖縄しかないんや!」と、のっけに生徒の一人が言いますが、大坂でその世界観となると、ともすれば某作品のようなアプローチ方法しかないかと思いきや、この作品は意外に「俯瞰」。よって、嫌味がないことにつながるのです。
で、そういうカテゴライズは良くないのかもしれませんが、「覚悟を決めた根っからのご当地映画」には、そうそう外れはないというのが持論です。その法則には、ハマった気がするワケで。
また、自分もあの頃の小・中学生ですから……。当時の不良たちの姿はね、なんかありありとフラッシュバックしてきました。中年世代なら、そういうなんとも言えん感じもね、味わえるんではないですかね。
ソフト・放送・配信でのアプローチは今の所ないらしいので、劇場なりで観るしかないです。率直にはそれも勿体ない気もしますけれど、それこそ「向き合って」みてもいい作品ではないかな、と。