「「私は保護司」と言うインパクト」前科者 Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
「私は保護司」と言うインパクト
原作漫画やテレビドラマは知りません。
◉常軌を逸した保護司
工藤誠(森田剛)が阿川佳代(有村架純)の助けで工場で働くようになるまでの前半は、社会派のストーリー。ところが誠の弟が出現してからの後半は、連続殺人を軸にしたサスペンス。
これ自体はよくある展開ですが、結局は最後まで個性的な一人の人間を描いた映画として観ることになりました。工藤が内包していた闇が次第に明かされると言うよりも、佳代と言う保護司が画面の前面に居続けたからでした。
傘で窓ガラスを叩き割り、いくら幼馴染みでも捜査担当デカに抱かれそうになり、一杯だけならと飲み出してグデングデンになる。
生真面目な保護司が曝け出す、破天荒な素顔。誠実や情熱が煮詰まりすぎたら、こうなるのだろうか?
その割には、牛丼を食べる時は落ち着いた幸せ感を漂わせていましたが。
◉急ぎ足のサスペンス
社会派ストーリーに対してサスペンス部分は、何故かと思うほど矢継ぎ早に、人が現れては消えてしまいました。恨みを抱えた弟が兄の元を訪ねるが、兄は弟を思い止まらせることはしない。
不謹慎だった警官、緊張感の無かった福祉課職員、性格が破綻していた養護施設職員が次々に殺され、母の死の経緯が明らかにされて、兄弟は最後の犯罪へ向かう。
サスペンスとしてまとめるために、あまりにお誂え向きの展開と状況が出現してしまったと言うのが、正直な感想です。
◉ノーギャラの国家公務員
他の方も書かれていたので、少し安心しましたが、私もこれだけ生きていて、保護司がボランティアとは知らなかったです。凄いです。
終盤、私の目は「ひたすら必死な」保護司に更に惹き付けられました。相手を第一に思っているのに違いないのだけれど、まず自分で自分を確かめたくて、認めたくて、頑張る国家公務員。結果として対象の人も救われる。
有村架純は喜びも怒りも嘆きもありのままで、役者としてしっかり自然体(かなり個性的ながら)の保護司を演じていたと思いました。
彼女ならば、私も愛おしく思わず応援しない訳にいかないです。