「憎しみを」前科者 よっちゃんイカさんの映画レビュー(感想・評価)
憎しみを
犯罪を犯した方の更生を描いた映画としては去年のすばらしき世界があるが、すばらしき世界が犯罪者視点で語られるドラマならば前科者は保護司、つまり犯罪者に寄りそう第三者目線で描かれる。
この映画を見るまで勉強不足ゆえ保護司という方の存在を知らなかった。
映画を見てまず驚いたのは保護司に報酬が払われない即ち実質ボランティアである事。
映画を見ないまでも人を更生させるというのは大変な労力がいるのになぜ報酬が支払われないのか。
この点は今すぐ変えるべきだと感じた。
が、この映画が伝えたいのはそこではない。
人はなぜ罪(特に殺人)を犯すのか。
もちろん無差別で快楽的に殺人を犯す人もいるだろう。
何不自由なく育ってきて遊ぶように人を殺す人も中にはいるかもしれない。
しかし本作で描かれるのはそういった人々ではない。
幼少期に辛い目に遭いその時の憎しみから罪を犯す人である。
この作品ではそういった憎しみをどうやって溶かせばいいのかそういうことを学べる・・・と思う。
少なくとも憎しみは何も生まないという事がわかるだろう。
本作では誠と実の兄弟以外にもう1人憎しみに囚われた人物がいる。
滝本真司だ。
真司は殺人を犯すものをとにかく憎み、何が何でも捕まえようとする。
拷問、盗聴なんでもござれである。
そこまで彼がするのも父を人に殺されたことからくる憎しみが原動力になっている。
最後真司の憎しみがこもった言葉を丁寧に主人公の阿川が消していたのが印象的。
そんな憎しみに囚われた刑事を磯村勇斗さんが好演していた。
有村架純さんも加害者に寄り添いつつも叱る時は叱る芯の強い阿川を好演していた。
最後に劇中で阿川が言った言葉で締めたい。
「正直出所した後法律や福祉ではあなたを救えません。でも辛い事があったら私を訪ねてください。私に聞こえるように声を上げてください。また一緒にラーメン食べましょう?」