「観るべき点は水の描写のみ。」宇宙の法 エローヒム編 しそさんの映画レビュー(感想・評価)
観るべき点は水の描写のみ。
開幕で、黎明期編を観ることが前提のような視聴者置いてけぼりの説明。急に独特な世界観を説明されても理解が追いつかない。
人外の種族は輪廻転生して人間に生まれ変わるという設定も、さも視聴者が既に理解している事を前提かのように語られるため、観ていて混乱した。
キャラクターの人格もあってないようなもの。原作者の思想をキャラに投影して喋らせている印象が強い。急に「地球は魂の修練場」だの「愛と自我犠牲の精神が云々」だの抽象的な事を語られても共感出来ない。それならば、原作者が個別で説法すればよっぽど趣旨も分かるしやり方も理解出来る。活き活きとした人格を有しているのは作中の敵キャラのダバールくらい。
主人公格のヤイザエルのキャラもブレブレ。最後の扱いも酷い。ベガ星における屈強な星の守護者という設定なのにも関わらず、ラジミールが戦死した際に少女のように蹲り泣き叫ぶとはどういうことか?これまで数々の星を護ってきたのでしょう?その間に少なからず犠牲はあった筈であり、設定と行動がチグハグ。ダハールに倒され、エローヒム神の力で蘇生し覚醒させたいというシナリオを描きたいが故に、そのような脆い性格にしたのではないか?と疑ってしまう。
挙句、地球侵略を諦め逃走するダハールを「出前に行ってきます」と言わんばかりのノリで追走し、それで作中から退場。パングルの取ってつけたようなセリフ一つで、ヤイザエルのあんなアッサリとした退場に視聴者が納得するとでも思ったのだろうか?
作中のメカ・モンスターデザインも流行所から好きなものを摘んできたかのような印象。一つ一つのデザインは悪くはないのだが、全体的に纏まりがない印象。…デジモンの世界観に聖闘士星矢風の造形の人間同士が闘い、宇宙からガンダムの戦艦群が迫ってくる、と言えば未視聴者にも伝わるだろうか。
尚、既に何人かが挙げている様に、水の描写だけは腰を抜かすほど美しかった。
総じて、原作者の抽象的な価値観をキャラを通して押し付けたいという印象しか残らなかった。
暗い映画館の中で眠ろうにも、虫唾が走るような歌詞の主題歌がちょくちょく挿入されるため、睡眠にも適さない。
異常な程美しい水の描写を見たい人にはお勧め出来るであろう。