「非現実さを含みながらどうしようなく現実味を帯びている」ムーンライト・シャドウ あおねるさんの映画レビュー(感想・評価)
非現実さを含みながらどうしようなく現実味を帯びている
この作品の主軸は個人的には、ヒロインのさつき(小松菜奈)が恋人の等(宮沢氷魚)と過ごした尊い時間から等の死を受け入れるまで。等の弟の柊(佐藤緋美)が恋人のゆみこ(中原ナナ)の死を受け入れるまで。時間の流れとともに変化していく細やかなさつきと柊の感情を四季のように描いた作品だと思いました。
状況とは裏腹に淡々と進む部分もあり少々違和感もありましたが、特殊な設定でもあるのでそこはご愛嬌として鑑賞しました。
この作品を鑑賞して感じたのは、誰しもが大切な誰かを失った時言いようもないほどの悲しみに襲われ、そして不確かな何かに縋りたくなるということ。人は心では分かっていてもどれだけ非現実的でも一縷の望みに期待し諦められない。
悲しみから逃れるために、これが現実であると忘れるために忙殺されようとしたり、しきりに何かに没頭します。
呼吸をして生きているのにまるで生を感じられないさつきと柊の静かな悲しみがそこにはありました。
昔から幸せにはいつでも悲しみが付き纏い、幸せは一つ線を消せば辛さに変わると言いますね。
人間が目を逸らしたい悲しみからもがき苦しむ様は現実でもありえること。
この作品ではそこにスポットライトを当てて描いていたように感じました。
原作にあまり沿っていないため実写化は別物として観ることをおすすめします。
小松菜奈さんのファンでなければ見飽きてしまうかも。
小松菜奈さんと宮沢氷魚さんの共演自体は非常にエモーショナルでその点では良かったです。
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