ホテルアイリスのレビュー・感想・評価
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もう少し冒険してもよかった
倒錯した性的嗜好を持つ初老の翻訳家を、色気とは無縁に見える永瀬正敏が演じたギャップがいい。ヒロインのマリを演じた28歳の陸夏はとても少女には見えなかったが、ほとんど笑わない演技がそこそこよかった。
舞台は台湾の場末のリゾートホテルである。どうして舞台を台湾にしたのかは不明だ。マリの母は、お祖父さんが創業したこのホテルは、受け継いだ私たちが守っていかなければならないという。菜葉菜がマリの母親を演じたが、こちらは完全な日本人だ。マリは微かな台湾訛りの日本語を話しているから、父親が台湾人であることが知れる。
ということはお祖父さんは日本人で、台湾でホテルをはじめて、なんとか成功させた訳だ。お祖母さんもおそらく日本人で、マリの母親は日本語しか話さない。マリの父親はお祖父さんにとっては義理の息子ということになる。
携帯電話が登場しないことや、マリの服装などから、時代は1990年頃ではないかと推測される。ホテルの仕事をほとんどひとりでこなしているマリは、挨拶がまず日本語である。つまりホテルアイリスは基本的に日本人の観光客向けなのだ。
ちょっと設定が分かりにくかったので、まとめてみた。設定以外でも、ストーリーの最初と最後の時系列がややわかりにくいが、ここでは割愛する。
さて、人間はその本性を理性の仮面で隠して生きている。特に性的嗜好はなるべく隠したいものだ。だから大抵の場合、欲望の充足は密室で行なわれる。例外は露出狂で、不特定多数の人に見聞きされる羞恥心が性的興奮を高める。しかし行為自体は極めて個人的である。
一方で、欲望の充足には相手が必要だ。だから密かなコミュニティがあったり、密室でサービスされる性風俗産業があったりする。個人同士の関係の中で性的嗜好が披露されることも、当然ある。それがノーマルの範囲内であれば問題はないが、アブノーマルな嗜好である場合には、悲劇に発展することもある。
本作品の翻訳家は異常性欲の極みである。ネクタイをしてスーツをきちんと着こなした真面目そうな外見からは、とてもそんなことは想像できない。しかしホテルアイリスに呼び寄せられた売春婦とのトラブルの様子を見たマリは、翻訳家の言葉の中にある淫靡さを敏感に感じ取る。
作品自体にはそれほどのエロティシズムは感じられない。いや、当方に感じられなかっただけで、もしかしたら緊縛趣味の人にはそれなりの興奮要素があったのかもしれない。もう少し音声の表現があれば、違ったと思う。マリが悶える声やオルガスムスの叫びなどである。それがあれば、マリが再びオルガスムスを求めて翻訳家を尋ねる行動も、抵抗なく腑に落ちたと思う。マリの中にあるファザコンと性欲が本作品の主眼だと思うが、その表現が不十分だったように感じた。
この種の作品では、観客それぞれが隠している性的嗜好を呼び覚ますのが大事である。しかし性表現が過剰になると、単なるエロに堕してしまう。そのバランスが非常に難しい。本作品は少し安全策に寄り過ぎてしまった。もう少し冒険してもよかったが、作品としては悪くないと思う。
出口
32本目。
家の近くでサイレン。
あれ、踏切に消防車停まってる人身か?
って、間に合わないじゃかと思ったけど、行先逆だから、何とか間に合い。
思ってたより、空いてからラッキーだったけど、R指定?
スイッチが違う方向に入ってしまったけど、始まった瞬間から、合わない感じで。
間だったりで、作品のいびつ性を感じつつも、どっかで自分の中で作品との折り合いをつけ様にも、上手くいかずで。
出口の見えにくい作品。
あざとさのかけらもない
永瀬正敏が素晴らしすぎる。
その存在感が映画の中で見事に調和しているのが、
俳優の感覚なのか監督の手腕なのかロケ地なのか撮影の技術なのかわかりませんが、
他も含めてその全てなのかもしれませんが。
永瀬正敏。すごい。
観た後、見慣れた風景がいつもと違って見えました。
作品としてはよい
予告編で興味を持って。耽美的あるいはエロティックサスペンスかと思ったらサイコホラーだった。映像はきれいでストーリーや構成もまあ興味深く、映画としての出来はむしろよい方と思うのだが、精神的にバツだった。観賞後の胸くそ悪さという点で、個人的にはミッドサマーの次にくる。
永瀬正敏の常に紙一重的な役づくりがはまっていた。
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