「本当にこれで最後なのだろうか?」ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME 3 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
本当にこれで最後なのだろうか?
【この作品レビューは、ネタバレを避けつつあらすじに触れています。鑑賞予定のある方で気になる方は、鑑賞後にお読みください。】
アベンジャーズの一員として世界を救った《ガーディアンズ》の第3作目にして、最後にして最大のお祭り騒ぎを標榜する作品。本当にこれで最後なのだろうか?
物語は、サノスとの戦いで最愛の恋人ガモーラ(ゾーイ・サルダナ)を失ったショックから立ち直れないガーディアンズのリーダーであるピーター・クイル(クリス・プラット)は、本拠地にしている人口の惑星「ノーウェア」で酒浸りの毎日を送っていました。そこへソヴリン人の女王アイーシャの息子であるアダム・ウォーロック(ウィル・ポールター)が、「ノーウェア」を襲撃させて、大暴れします。ガーディアンズの面々も抗戦するものの、歯が立たず、アライグマのロケット(声・ブラッドリー・クーパー)は深手を負ってしまうのです。
ロケットには、外部から身体に干渉しようとするとロケット自身を殺してしまう機能が備えられていました。ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーは、そのロックを解除するためのコードを手にいれるため、ロケットを遺伝子操作によって生み出したハイ・エボリューショナリー(チュクウディ・イウジ)が本拠としていているカウンター・アース(地球をコピーしたようなそっくりな星)へと乗り込んでいったのです。
ハイ・エボリューショナリーは、銀河を完璧な世界に作り変えようとし、全ての生物を強制的に進化させて「特別な種族」にしようとする神の真似事をしている科学者でした。 アライグマだったロケットは幼い頃に改造を受けて天才的な頭脳を得たのですが、ハイ・エボリューショナリーは脱走したロケットの頭脳だけを取り戻そうとアダム・ウォーロックを送り込んだのでした。
-
ピーター・クイルはガーディアンズを率いて、チームが解散するかもしれない危険な任務に挑むこととなります。
本作は、ロケットの物語になることは予告されていました。予告通り、ロケットの誕生の過去が明かされることと、ロケットの命を救うための闘いが交差していく展開となりました。意外にもロケット本人は劇中のほとんどの時間を意識不明の状態で過ごすことになるのです。これまでやさぐれキャラとして、感動シーンとはほど遠い存在でしたが、本作では彼の意外な側面が描かれて、凄くエモーショナルなシーンたっぷりの仕上がりとなりました。
先ずはロケットが不在という状況の中で、普段対立しがちなメンバー同志が、ロケットを救いたい一心で、ぶつかり合いながらも珍しく一致団結して闘うところ。メンバー同志の絆の強さを感じさせてくれました。
特にピーターのロケットの蘇生を試みる熱い思い、「死なせない」と心臓マッサージを諦めない姿は涙なしで見ることはできませんでした。
ロケットの復活を願ってネビュラ(カレン・ギラン)が涙を流すシーンも非常に感動的でした。何しろ彼女はサノスの指パッチンで消えた後の5年間、ロケットと共に時間を過ごしていたのです。既に一度義姉であるガモーラを失っているネビュラは、心の中ではロケットのことが心配で仕方がなかったのでしょう。
死の境を彷徨っているロケットは、イタチでロケットの恋人だったライラ(声・リンダ・カーデリーニ)、セイウチのティーフ、ウサギのフロアと再会を果たすシーンも感動的でした。4人は全てハイ・エボリューショナリーが生み出したもので、ロケット以外の3人は用済みとなり廃棄されてしまったのです。
劇中ロケットが叫ぶ、「俺は作られるように頼んだわけじゃない! 引き裂かれたり、何度も元に戻したりして、小さなモンスターになるように頼んだわけでもない。」の台詞には、ロケットの哀愁たっぷりで、グッときました。
死を受け入れようとするロケットに、「まだなすべきことがある」と説得するライラ。 彼女は、「生まれてきたこと自体は頼んでもないわけだけで、不本意な出来事だったかもしれなかったかもしけないけど、それは皆同じこと。だからこそ何のために生きればいいのか分からない者を導いてあげる存在が必要なのよ。」と告げて、その役割を担うのがロケットなのだと諭すのでした。
そしてハイ・エボリューショナリーの基地で、脱出しようとしたロケットが思わず、多くの動物たちが閉じ込められていた檻の前で足を止めてしまうシーンは、彼の過去に追わされた心の痛みから滲み溢れる優しさをたっぷり感じさせるものとなりました。
ロケットが思わず足を止めたのは、アライグマの赤ちゃんが多数監禁されている檻の前。ロケットは食い入るように赤ちゃんたちを見つめ、過去の自分と重ねて、涙するのですあのやさぐれキャラとは、全く別人のようなロケットでした。
実はロケットは、アライグマを知らなかったことから、自分は「アライグマじゃない」と否定してきたのです。赤ちゃんたちのケージに、「北米のアライグマ」という表記があったことから、ロボットも初めて自分がアライグマという種であったのだということを認識するわけです。赤ちゃんにロケットが手を差し伸べるシーンは、一段と感動的でした。
さて、ドラマは、ピーターが地球に久々に帰省し、疎遠にしていた祖父と再会します。激戦が続いた物語の終わりにしては、凄く穏やかな終わり方でした。ちなみにクイルの実家はミズーリ州に設定されています。ここはジェームズ・ガン監督の出身地でもあるのです。監督は、シリーズを止めて、一休みしたかったのかもしれません。
そしてガーディアンズは、去って行くメンバーだけでなく新メンバーが加入し、新たな体制に。何がこれで終わりなのか。「ガーディアンズは戻ってくる」とはいわないものの、やる気満々じぁありませんかねぇ~!きっとアベンジャーシリーズが再起動してピンチに陥ったとき、「スター・ロード」として彼らは帰ってくることでしょう。